平成20年9月本会議の一般質問で県庁舎建設問題を質した質問原稿をここに掲載し、それについての知事の答弁と私の再抗弁を続けて申し述べます、ご一読下さい。
先ず、県庁舎建設問題についてお尋ねします。
第一に、県庁舎の魚市跡地への移転新築と県都長崎市の都市整備のあり方についてであります。
戦後長崎は、廃墟の中から戦災復興のまちづくりが進められ、多くの区画整理事業や都市計画事業等が行われ、また、港の埋立てや公有地の拡大等も行われてきました。そうしたことで都市機能や住環境の整備が図られる一方、長崎のまちの特長や歴史的資産が失われ、あるいは、文化的色彩をより高めていくことが物理的に制約されるといった状況も生まれてきました。こうした状況においては、長崎のまちのランドマークのひとつになるであろう県庁舎の建設にあたっては、県都長崎市の今後の都市経営の戦略と、そのための都市づくりについての考え方を示し、その枠組みにおいて進めるべきと考えますが、ご所見をお伺いします。
また、仮に魚市跡地に県庁舎を建設する場合、それが、長崎駅周辺の再開発について、どのような意義とインセンティブを持つとお考えか、併せてお尋ねいたします。
第二に、政策選択の優先度の価値判断についてであります。
ご案内のように近年のわが国は、都市と地方の経済格差、働く人の間の所得の格差、住んでいる場所による公共サービスの格差といった格差社会が益々拡大していく中で、本県はそれに輪をかけて産業は全体として低迷し、雇用の問題もいつまでたっても深刻な状況が続き、キャノンの立地という朗報はあるものの有効求人倍率は全国でも最も低いランクに甘んじております。
さらには、燃油はもとより、資材や原材料の高騰の中で生活用品等の物価は上がり、国全体の景気後退の流れと相俟って、県民の暮らしは益々苦しくなる状況が続いております。
離島はいつまでたっても人口流出が続き、地域のシビルミニマムをどうやって維持していくかと言うことさえ考えなくてはならない状況まで追い込まれている地域もあります。
その一方で将来のための社会基盤の整備についての要望も多く、さらには、全国最下位のレベルにある小中学校や高等学校等の耐震化工事も急務でありますし、医師不足や公的病院の再編統合が予定されている中で、県民の生命を守る地域医療を確保するための着実な取り組みも進めていかなければなりません。
こうした ふるさと長崎に定住できるための基礎的な社会環境を整備していくことが、これまでにも増して緊急不可欠な時にあって、来庁舎へのサービス向上とはいえ、巨額の経費を投資することになるであろう県庁舎という、私ども議員を含め県民のために仕事をする職員の事務所の新たな整備を、耐震化という一点のみをもって急ごうとする理由は何か。為政者の判断として間違っていないという論拠を明確にお示しいただきたいと思います。
なお、答弁に当たっては、庁舎整備基金と政策投資予算とは、財布の引き出しが違うという言い方は是非避けていただくようお願いします。
第三に、現状における県財政の見通しとの関係についてお尋ねを致します。
本県の財政状況を見るに、先ず、平成19年度の一般会計の歳入決算総額は7,018億3,400万円で、近年一番大きかった平成12年度の最終予算額と比較しますと、約1,730億円も減少しております。
国の三位一体改革や、緊縮財政により地方交付税や国庫支出金が大幅に削減されてきたことが、まさに影響しているわけでありますが、そのことによって一番大きなあおりを受けているのが、公共事業関係費をはじめとする政策投資予算を大幅にカットせざるを得なくなったということであります。
公共事業による財政の所得再配分機能によって、地域経済を支えるといった時代は終わったと思いますが、さりながら、産業構造の改善や新事業展開がなかなか進まない地場の事業所を多く抱える本県にとって、政策投資予算が大幅に削減されてきたことは、本県の産業の低迷に少なからず影響を与えております。
なおかつ、そうした政策投資予算の削減が余儀なくされる中で、人件費や内部管理経費などの経常経費も、大幅にカットしなければ財政運営が成り立っていかないことから、今年度から3ヵ年で164億6,000万円の収支改善を図るための財政構造改革を着実に進めていかなければならないという、いわば、財政危機宣言をしてもおかしくない状況にあります。
その一方で、社会保障関係費のうち、例えば、介護保険給付費の県費負担金は、制度発足時の平成12年度70億8,722万円であったのに対し、今年度の当初予算額では150億1,400万円に上り、今後はさらに増加する傾向にあります。
県の財政運営に係る県民の借金は、1兆845億円で、今年度一般会計当初予算総額の1.47倍、県民一人当たりでは73万8,000円。これに県民一人あたりには、国の借金477万8,000円と市町の公債費負担額が加わることになります。
そうした中で、いま既に進んでいる事業や計画に対する財源手当ても行わなければなりません。主なものだけでも、新幹線建設についての本県の負担金として約513億円、JRの連続立体化事業の県負担金として約93億円、国体開催の関係経費として、毎年の積立金合計70億円の他に、県立総合運動公園の改修費等で50億円から100億円、道路建設予算が今の建設水準を確保していこうとすれば毎年約540億円。
いちいち列挙すればきりがありませんが、こうしたことが目の前にぶら下がっているわけであります。さらには、先程申し上げた県民のくらしに直結する緊急課題への対策も急務であります。
知事は、これまで県庁舎の建設は、整備基金の積立金368億円があるから、財政運営に支障はきたさないと言われてきました。
しかし仮に、その基金総額の範囲内で建設費を賄えたとしても、只今申し上げたような課題への財源をどうやって確保していくのか。さらに言えば、タタキ台と言っても示された建設費の試算額は451億円で、これは既に基金積立額の総額を上回っておりますし、移転新築に伴う高度情報関係設備や、防災行政無線の整備費、備品関係の調達経費、外溝経費や現庁舎の解体費、移転雑費等々を加えた全体事業費はその451億円に更に上積みされてくるわけでありますが、それでも県民の負託に応えるべき県政運営上、何ら支障がないと言い切れるのかお尋ねいたします。
また、庁舎整備の財源として起債を使うことで、県民に新たな借金として上乗せすることは、事業の性格上県民にはなかなか受け入れられないと私は思いますが、移転新築にあたって、県民への公債費負担の増はないと言えるのか、併せてお尋ねいたします。
第四に、仮に移転新築する場合の跡地活用対策についてであります。
現在地は、ご案内のとおり、かつて江戸期に長崎奉行所西役所が立地し、ここを起点として商人町や住宅街が形成され、また、長崎の特異な歴史を表象する出島や唐人屋敷や居留地がつくられるなど、この地は長崎の市街地形成の要としてのポテンシャルを有してきました。
奉行所廃止後も、明治7年に最初の県庁舎が建てられて以来、建物自体は何度か立て替えられましたが、ずっとこの地に県庁舎が立地しております。
その現在地から県庁を移転するのであれば、長崎のまちづくりを牽引する役割を果たしてきたこの地の意義からして、私は、その跡地は今後の長崎のまちづくりのうえで訴求力をもった施設整備がなされなければならないと考えます。それは決して民間活力の活用ということに委ねるべきではなく、長崎人の思いと、気概と、エネルギーを、表象するような公共施設であるべきであります。
そして、そうした現庁舎を建設する時にかけられたエネルギーを上回る事業へのエネルギーと、当該施設建設の意義・有用性が認められるとき、この県庁舎が壊されるというシナリオが、長崎のまちづくりを進めるうえで最も自然な形であると思います。
しかしながら、今、我々の目の前にある現実は、県庁舎を魚市跡地に移転新築するという議論が先行し、この大切な現在地の跡地対策については何の計画もビジョンも示されていないのであります。
立山の知事公舎を廃止したのは、諏訪の森整備構想に基づき、長崎の特長的な歴史文化博物館を建設することに伴う、反射的結果ではありませんか。
現在地についての活用策が何ら示されないままでは、長崎のまちづくりに携わってきた多くの人たちや、長崎をふるさととする人たちは、県庁舎の移転に納得しないと私は思いますが、知事の所見をお伺いいたします。
また、現在地の活用策に基づいて新たな施設整備を行う場合、それに係る経費は、県庁舎の移転にかかる経費と併せて、この移転新築の全体事業費として示される、換言すれば、一大プロジェクトである県庁舎の移転新築計画の全体事業費は、跡地活用に要する経費を含めて示されるべきと考えますが、併せてお伺いいたします。
第五に、庁舎整備あたって検討すべき選択肢のあり方についてであります。
現在、県庁舎問題の論議は、移転新築か耐震補強か、どちらが得策かという図式の中で進められております。事務室が老朽化、分散化、狭隘化する中で、耐震工事をするなら135億円かかるものの耐用年数が延びることはないとする一方、移転新築の場合はタタキ台の試算として約451億円かかるものの庁舎整備基金として368億円があり、現在の事務室や駐車場などの問題も改善される。よって、どちらを選択するかといった選択肢に限るようにして理事者が議論の俎上に乗せているからであります。
しかし、これだけ県民の関心が高い問題でありながら、選択肢をこの2つに絞ることは、移転新築を早く進めたいという意図が強く働いているように思えてなりません。一定の与件を基にしながらも、広範な議論がなされるのを制約しないというのであれば、庁舎整備のあり方について、もっと多角的な議論がなされるべきであり、そのための資料も出すべきであります。
今、事務室のうち民間施設の借上げ面積が約4,340u、事務室・会議室の年間借上げ経費は1億9,400万円。これがいかにも不都合ということであれば、それこそ老朽化し土地利用として勿体ない状況になっている第3別館を建て替えれば、延べ床面積約6,700uの施設が建設でき、借上げている事務室全部と、それに加え本庁舎6階の土木部1,700uの事務室も確保できることになります。
建設費も新別館の建設費を基に延べ床面積で按分した私の試算ですが約31億円程度で済み、庁舎全体を移転新築する場合とは桁違いの事業費であります。
また県は、新別館の背後地約500uを5億円で庁舎整備用に買収していますが、この土地の活用も今回の議論においては全く表に出されておりません。
地方機関を一定集約する目的だったとか、建築基準法の改正によって新別館の増築という形での延床面積が減少し、建設規模が縮減したとかのコメントをしておりますが、新別館を増築し、そこに、地方機関を入れるというのは、これまでの組織配置のあり方として考えられないことであり、本庁機能をもった新たな事務室の確保を目的とした用地買収であったと私は思っております。
実際、今、県が取り組んでいる地方機関の再編統合計画では、当該地の活用は全く考えられておりません。そうであれば、折角5億円もかけて買収した当該地を活用し、不足する事務室や会議室を整備するということも十分検討されなければならないと思います。
そうした善後策を講じながら、県庁舎の移転新築については社会経済情勢や財政状況を勘案しつつ、先ほど申し述べた移転に関する基本的な諸条件を整備したうえで、改めて合意形成を図るという考え方も検討の俎上に乗せるべきだと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
以上の質問に対する知事及び理事者の答弁の骨子とそれらに対する抗弁については『県庁舎建設問題について(U)』をご覧下さい。
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