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平成29年6月定例県議会での一般質問  (平成29年6月掲載)
 平成29年の6月定例県議会で県民主役の会から私が登壇し、九州新幹線西九州ルートの問題、日韓トンネルの建設促進およびBSL-4施設の整備問題について執行部の見解を質しました。

 九州新幹線西九州ルートの問題については、JR九州がフリーゲージトレイン(FGT)の運用では採算が取れないこと、また、JR西日本がFGTによる新大阪乗り入れはダイヤ編成上困難であること等が新聞報道で伝えられていることや、現在の進捗からみてリレー方式での運行期間が長期化することが懸念されることから、知事との質疑を行いました。

 また、BSL-4施設については、知事及び長崎市長が設置を容認したことから、その正当性と自治体として行うべき責務について知事の考えを質し、白紙撤回を求めました。
長崎新聞 17/6/28
 一般質問での質問事項は以下です。

1.九州新幹線西九州ルートについて
 @ FGTの維持コスト問題と対応
 A FGTによる山陽新幹線乗り入れ問題と対応
 B リレー方式による暫定運行期間と利用料金の問題と対応

2.日韓トンネルの建設促進について
 @ 日韓トンネルの建設促進に向けた機運の醸成
 A 日韓海峡沿岸県市道交流知事会議の議題の柱とすることについて

3.BSL-4施設の整備問題について
 (1) 知事の主張の根拠について
  @ 平成28年12月定例議会での知事説明
  A 平成29年2月定例議会での知事答弁
 (2) 施設計画に対する県行政としての必要な措置について
 (3) 治療薬の開発状況からみた施設建設の必要性について

 以下に議事録(一部の字句を修正)を添付しますので、是非ご覧いただき、ご意見をいただけると幸いです。



【比良議員】 県民主役の会、比良 元でございます。時間がありませんので、早速質問に入りたいと思います。

1、九州新幹線西九州ルートについて

 @ FGTの維持コスト問題と対応


 JR九州の青柳社長は、昨年12月の定例会見で、「FGTを営業車として使った場合の製造、メンテナンス等の維持管理コストが、一般の新幹線に比べて2.5倍から3倍程度になり、これは現実的な水準を超えており、きちんと費用対効果が守られるものでないと事業者として受け入れられない」と表明したと報じられました。
 また、「これまで2年かけた不具合の対策が不十分となれば、FGTの開発が2年どころか、かなり先に延びると言わざるを得ず、新幹線と在来特急を乗り継ぐリレー方式が固定化につながり、未来永劫やるというのはとんでもない話で、早く次のステップにいかなければならない。即ち、国に全線フル規格化の検討を求める」とも述べておられました。
 ついで、去る6月17日の長崎新聞によりますと、JR九州は、「維持管理コスト高に加え、営業車としての安全性も問題視し、九州新幹線長崎ルートへの受け入れは困難と判断していることがわかった」と。「国がFGT開発を続けること自体は否定しないものの、同ルートへの導入見送りを求める意向であり、国の技術評価委員会が7月にも開かれるのを踏まえて、国側に伝える方向で調整している」と報じられております。
 ここに至って、6者協議で決まったことだからといって、これ以上、FGTにしがみついても、本県としては、県民の期待を裏切るばかりか、末代まで禍根を残すようなことになると思うのであります。
 しかるに、知事は、同僚議員の質問に対し、「JR九州は、FGTを断念するとの事実はない」と答えられておりますが、今、取り上げた新聞報道について、どのような感想をお持ちか、まず、お尋ねをいたします。

【中村知事】 比良議員のご質問にお答えをいたします。
 フリーゲージトレインの開発等に対するお尋ねでございます。
 フリーゲージトレインに関する一連の報道につきましては、JR九州にも直接確認をいたしておりますが、フリーゲージトレインの受け入れを断念する方針を固めたという事実はなく、「軌間可変技術評価委員会の結果を見極める」とのことであります。先日の株主総会でもそのように述べられており、これが現時点でのJR九州の見解であろうと考えているところであります。
 また、フリーゲージトレインについては、現在、検証走行試験後の台車を分解しての詳細調査や、コスト削減にかかる検討等が行われており、今後、軌間可変技術評価委員会で評価が示されるということとなっているところであり、このため、現時点においては、この軌間可変技術評価委員会で示される評価結果をしっかりと見極めていく必要があるものと考えているところであります。

【比良議員】  想定どおりの答弁なんですが、確かに、先ほどの、株主総会でのJR九州の話というものを信じるということでありますけれども、ただ、先ほど私が読み上げました長崎新聞の記事、これは飛ばし記事なんでしょうかね。決してそうじゃないと思うんですよ。あれだけの記事を書くからには、それなりのしっかりとした裏づけを取っていると思うんですよね。
 想定どおりの答弁なんですが、それは言ってみれば、手がたい能吏であるという知事に対する評価がある一方で、問題を先送りするんじゃないかという批判も出てこないかとも思ったりするんです。
 いろいろ、その記事に対する感想は直接あるんじゃないですか。これは、なかなか厳しいぞというような話、あるいは不問に付すと、直接話がないからということでね。あるいは、国がそう言っている以上は、JR九州として、いずれはしっかり同意をしてくれるんだというふうな期待というか、そういういろいろな感想があるんじゃないかと思うんですが、なかなかお答えにならない。
 そこで、「九州新幹線西九州ルートについては、FGTを前提に着工・認可されている」といいましても、運行主体であるJR九州が「ノー」と言えば、そもそも成り立たないわけであります。
 そこで、知事は、「技術評価委員会で示される方向性を見極め、どういった方針で対応すべきか、腹を据えて考えていかなければならない」と、先日言われたわけでありますが、果たしてJR九州が正式に「FGTはノーだ」と表明をした時は、県としては、全線フル規格化にかじを切ると認識をしていいのか、お尋ねをいたします。

【中村知事】  先ほどお答えをいたしましたように、まだJR九州の見解が正式に示されるという状況ではないわけでありまして、ここで仮定の話についてご議論をするということは控えた方がいいんではないかと考えているところであります。

【比良議員】  何もしないで待ちの姿勢を決め込むというのではなくて、いろんなことを想定して、抜かりなく手を打つ準備をするというのが行政であり、政治家ではないんでしょうか。
 私は、FGTの経済性は今、通常の新幹線車両の2.5倍から3倍のコストがかかると言われているわけでありますが、幾ら技術評価委員会の専門家といえども、そう簡単にコストをうんと圧縮をして、経済性の問題をクリアするというのはできないと思います。なぜなら、そもそも軌間可変装置を新たに設置をしなければならないわけでありますから、そのためのコストが増嵩するというのは当然でありますので、採算のとれる状態まで圧縮するというのは、現実的にこれはもう無理じゃないかと思っています。JR九州も一部上場の株式会社でありますから、経済的に難しいことはできないわけであります。
 そこで、技術評価委員会としては、「経済性の問題は、さらに検討する」と言って先延ばしをすることが考えられるわけでありますけれども、その結果、FGT導入の可否が、いわば宙ぶらりんになってしまうのではないかと危惧をするわけですが、仮にこういうことになった場合は、知事としてどう対応するのか、お尋ねをいたします。

【中村知事】  先ほど申し上げましたように、まだまだ結果が見えない状況でありますので、そういった仮の前提の話での議論というのはいたしかねる状況でありますので、それについてはご理解をいただきたいと思います。

【比良議員】  立場もわかりますけれども、議論をしないとおかしいですよ。これだけ状況が迫っている中において、いろんなことを想定して抜かりなく手を打っていくというのが、今求められている職責だと思います。
 新幹線開業の時期を遅らせるなと言っていることからは、もし、今、仮定の話でありますけれども、そういうふうなことになった場合には、「こういった宙ぶらりんはのめない」と、「フル規格化を直ちに検討の俎上に上げる」と主張すべきだと思います。

 A FGTによる山陽新幹線乗り入れ問題と対応

 次に、併せて、JR西日本との関係です。乗り入れができなければ、開業効果の半減どころか、新幹線としての意味があるのかと疑問視する声が県民各層から上げられておりますし、県としても、新大阪までの直行便が運行されることを国に常々申し入れをしてきました。しかし、実際に運行を担うJR西日本の来島社長は、「走行性能が異なる車両の相互乗り入れは実際の運行面で大変難しい面がある」と語っておられると報じられております。
 現在、山陽新幹線のダイヤは、最高時速300キロを前提に組まれているわけでありますが、FGTは270キロしかなく、山陽新幹線車両の中で最も遅いこだまの時速285キロにも及ばないということから、ダイヤ編成上、非常に大きな問題があると指摘をしているわけであります。
 実際にどういう問題なのかというと、それは新幹線が大量輸送の力を一番発揮する多客期にダイヤの筋が入れられなくなるということであります。
 ダイヤはUターンラッシュ時の多客期に目いっぱい詰めて走らせる編成をまずつくって、そして、通常運行は、そこから間引いて走らせているわけでありまして、この隙間にFGTを入れられるのであればいいんですが、速度が違う車両を入れれば、ダイヤが間延びし、崩れる。そうなると、現在、約2時間半の博多〜新大阪間が3時間以上もかかってしまう恐れがあると。
 県は、JR西日本の姿勢について、まだ乗り入れをだめだと決めたわけではないし、知事も新大阪乗り入れを国に強く要望していると言っております。しかし、これについても、現実から目をそむけてはならないと思うんです。国が、幾ら新大阪までの乗り入れを前提にFGTの運行を目指すと言ったところで、JR九州と同様に、実際の運行主体が「ノー」と言ったら空中分解をするわけであります。
 そこで、技術評価委員会は、仮にFGTの開発を進めると、あるいは、FGTでやるというときは、それは新大阪までの乗り入れの問題もクリアしたとして責任を持つのでしょうか。その問題は別、仮に別だというのであれば、知事として、どう判断をし、どう対応をしていくんでしょうか。

【中村知事】  先ほど議員がお触れになられましたように、このフリーゲージトレインを前提に認可・着工に至っているところでありますが、その際、国においては、「このフリーゲージトレインは山陽新幹線と相互直通運転をし、新大阪まで乗り入れる。なお、最高速度時速270キロで運行されるものとする」という前提のもとに認可・着工に至った経緯があるわけでありますので、私どもといたしましても、山陽新幹線に直接乗り入れることができて、中国・関西方面とのアクセスが確保されてはじめて、その新幹線の整備効果が得られるものと考えているところであり、極めて重要な視点であると思っております。したがいまして、さきの政府施策要望の際にも、政府・与党に対して直接運行も含めて、本来、西九州ルートが目指してきた姿、それをしっかりと実現していただきたいと。そしてまた、スケジュールもこれ以上先延ばしにされることがないようにという強い要請を行ってきたところであります。
 一連の課題については、この後、軌間可変技術評価委員会での評価に基づき方向性が示されてくるわけでありますので、それに合わせて、また、与党PT等のさまざまな議論を重ねて方向性が定められていくものと考えているところであります。

【比良議員】  私の問いに対する直接的な答弁にはなってなかったんじゃないかと思います。
 技術評価委員会は、その経済性の問題も含めたところで技術的観点からFGTの走行検証試験ですね、実施できるかどうかといったことについては、専門的な見地からの判断がなされるんじゃないかと思いますけれども、今、指摘をしているとおり、JR西日本の新大阪まで果たして乗り入れが可能かどうかということについても、そこを回答する責任ある立場ではないと思うんですよ。ここはもうひとえに、国はそこを目指しているわけでありますけれども、実際は、JR西日本の出方次第ということにかかってくるわけであります。そういうことが、今までの報道の中では、なかなか懸念をされるという状況に陥っている。
 そうであれば、そのJR西日本の社長に会って、JR西日本の確約を取るのが仮に難しいと、あるいは不透明だと本県として判断をされる時には、この点からも従来のスキームを見直して、次の新たなステップ、即ち、フル規格に変えるということを知事として強く申し入れるべきではないかと私は思います。

 B リレー方式による暫定運行期間と利用料金の問題と対応

 時間がないので、ちょっと飛ばしますが、次に、関連する大事な問題といたしまして、リレー方式による暫定運行期間と利用料金の問題について、お伺いいたします。
 国は、「34年度に暫定開業し、その2年ないし3年後にFGTによる運行開始」と言っているわけでありますが、FGTの営業車の量産が遅れ、必要な基盤整備も遅れ、FGTによる運行時期が示されない、あるいは後ろ倒しになっていくことが懸念されるような時にはどうするのかと。仕方ないと言って、結局は待つことになるのか。そうではなく、計画の全面見直しを主張していくのか、対応についてお尋ねをします。
 また、併せて、リレー方式での料金は、現行料金と比べて一体どうなるんでしょうか。時間短縮効果もほとんど生じない中で、仮に料金ばかりが上がるというふうになると、新幹線利用者は間違いなく遠のくと思料されますし、利用者にとっては踏んだり蹴ったりの状況になってしまうと思います。
 県民利用者のことが、いまだ蚊帳の外に置かれているわけであります。利用料金については白紙だと言うのなら、JR九州と積極的に協議し、県民に提示をしていくべきではないでしょうか。この点について、どのような状況なのか、また、今後、どうするのか、併せて簡潔にご答弁をお願いいたします。

【古川企画振興部長】 昨年3月の国土交通省からの説明によりますと、「今後のフリーゲージトレインの技術開発が順調に推移した場合、先行車の導入は平成34年度前半、量産車の導入は平成36年度末の見込み」とされております。また、昨年11月の本県での軌間可変技術評価委員会にかかる説明会におきましても、「そのスケジュールに支障を来さないよう努力していく」という発言がなされておるところでございます。
 このため、対面乗り換え方式によります暫定的な形での運行は3年程度となっておりまして、先に行った政府施策要望におきましても、これ以上、開発スケジュールに遅れを来さないことでございますとか、対面乗り換え方式を固定しないことなど、万全な対応を図ることについて、国等に対し強く要請を行ったところでございます。
 また、運賃、料金についてのお尋ねでございますけれども、これまで開業した九州新幹線鹿児島ルート、北陸新幹線、北海道新幹線の例によりますと、開業の3カ月から5カ月前に公表されているところでございます。
 県といたしましては、今後、運行主体でございますJR九州に対して、利用しやすい運賃や料金の設定について、機会を捉えて働きかけてまいりたいと考えているところでございます。

【比良議員】 これは、極めて政治的な問題なんですよね。だから、事務方が答弁をするというのではなくて、知事自身に答えてもらうべきなんですが、知事、今の答弁でいいわけですね。
 そうすると、私に言わせると、これも待ちの姿勢に終わってしまっている。当事者として、その進捗状況について、一つひとつ現場に行って確認をするというようなことがあってはじめて、いろいろ国が言っていることについて検証がされて、本県としてもそれを期待して推進をしていくということになろうかと思うんですが、何かこう聞いているとか、そういったことだけで終わっている。これはなかなか、今の取組のあり方としていかがなものかと私は思います。
 知事、九州新幹線西九州ルート、これは本県として多額の税金を投資をする大プロジェクトですよね。百年の大計にかかわる問題だと言っても過言ではありません。その大プロジェクトを、これまで幾つか指摘をさせていただいたとおり、私に言わせる致命的な問題を抱えるにもかかわらず、FGTの枠組みを変えないとすれば、それは本県にとって発展の命運が尽きることに陥りはしないかと思ったりもするわけであります。
 知事は、先ほどから「技術評価委員会の判断を待つ」と、このことの一点張りでありますが、FGTの運行の可否については、技術評価委員会にかかわる問題だけではないわけであります。これまで指摘したことについて、そして、時間がないので残念ながら端折りますが、大事なアプローチ線の問題、あるいは複線化の問題、こういったことも含めて、一つでも達成をできない、あるいは、期限の順守が見込めないと危惧される時は、九州新幹線西九州ルートは、もはやFGTは採用できないと、そして、全線フル規格でやる、お願いをすると、政治家知事として、国や6者協の関係機関に堂々と主張すべきだと思うのであります。
 フル規格の計画をすれば、並行在来線の取扱いや新たな財源の確保、とりわけ、佐賀県の理解と出損のことを殊さらに問題にされるわけでありますが、FGTでこれまで西九州ルートを引っ張ってきたのは国でありますから、その失敗の責任は国にとってもらう。即ち、整備新幹線の財源スキームについては、西九州ルートについては、地方負担分を国が肩替わりするということを主張することであります。
 その際、どうしても佐賀県の負担が幾らか生じる場合は、本県としてもその分を一定支援するということも検討されていいのではないかと思います。
 そして、並行在来線は、肥前山口からですから、これまでのことで決着済みとする。
 事ここに至っては、県民目線に立って、知事としてフル規格化を強く、堂々と主張してもらいたいと強く要望いたしますが、知事の考えを再度総括して答弁をお願いいたします。

【中村知事】  この整備新幹線西九州ルートのこれからの方向性の問題については、この本会議でもたびたびご議論をいただいてきたところでありますが、ご承知のとおり、この九州新幹線西九州ルートの認可・着工に至った経過というのは、もうご承知のとおり、さまざまな協議、調整を重ねて、フリーゲージトレインによって開発を進めるという合意を得て認可・着工に至った経緯があるわけでありまして、今、まだその前提の中でさまざまな課題が生じていることから、検証作業が行われているわけであります。
 したがいまして、まずは、その検証結果をしっかりと見極めて、これからの方向性を見定めていく必要があるものと考えております。いつまでも、課題が残されたままの状態で長引くということについては、これは我々としても許されない話でありますので、その時、その時の情勢に応じて最善の選択をしながら、国に対して働きかけを行っていく必要があるものと思っております。
 今の段階で、フル規格に移行を主張してはどうかというお話でありますが、まだまだこれまでの経緯、前提がクリアされたという状況ではないわけでありますので、いま少し事態の推移を見極めた上で、その段階で判断をしていくべき課題であろうと思っているところであります。

【比良議員】  知事の主張、立場もわからんでもないですけれど、ただ、ここは長崎県、ここは一番この九州新幹線西九州ルートについて関わりを持っているところなんですよ。言ってみれば、長崎県の命運を担うというような、そういった大プロジェクトなわけです。ですから、技術評価委員会がどういうふうな意見になってくるのか、判断になってくるのか、そこは見極めなきゃいかんというその主張については、一定わからなくもないわけでありますけれども、ただ、本当に一番の当事者として、いろいろ懸念されることに対して、いろいろ検証、確認をしていって、なかなか厳しいと、前提、予見が崩れる可能性があるという、その辺を仮に承知できる時には、早く手を打って、本県として大きく次のステップに踏み出すという、そういう取組を時を置かずにやっていく、こういったことが、今、作業としては必要なのではないかと私は思うものですから、そういう意味でいろいろ質問をさせていただきました。
 どうぞ、知事、政治家として動いてくださいよ、ここは本当に腹をくくってですね。お願いを申し上げたいと思います。
 時間がないので、また、別の機会で引き続きこの件については質疑をさせていただきたいと思います。

2、日韓トンネルの建設促進について

 @ 日韓トンネルの実現に向けた気運の醸成


 純粋に地域振興の観点から、日韓トンネルの建設促進についてお伺いをいたします。
 国際ハイウェイ財団が進めている日本と韓国を結ぶ日韓トンネルの計画、これは佐賀県の唐津市から壱岐、対馬を経て、韓国の巨済島から釜山へ至る全長約270キロメートルのトンネルで、うち海底部分は約150キロメートル、唐津〜壱岐間は約20キロメートル、壱岐〜対馬間は約50キロメートルとなっております。
 はじめて耳にされる方は、非現実的な話だと思われるかもしれませんが、唐津市には既に約20万平方メートルの基地を確保し、斜坑を約540メートルまで掘り下げております。
 また、対馬市厳原の阿連地区にも40万平方メートルの敷地を確保し、平成26年9月に坑口オープン式が実施をされております。
 さらに、壱岐でも芦辺町の馬ノ瀬地区に3万平方メートルが取得をされており、今年中に坑口オープン式を行いたいとされております。
 青函トンネルやユーロトンネルなどで示した日本の採掘技術からすれば、不可能な計画ではありませんが、事業費が10兆円規模になるということが予想されているため、日韓両国政府及び国民の理解が必要になりますことから、国際ハイウェイ財団は、現在、全国32府県に日韓トンネル推進の県民会議を立ち上げており、今年中には40都道府県まで広げる予定で、推進機運の醸成に努めておられます。近々、東京都も含む全国組織が結成される運びとなっております。
 なお、対馬市議会では、既に平成23年に日韓トンネルの早期建設を求める意見書が採択をされております。
 新幹線問題で非常に差し迫った問題を議論する一方で、非常に超長期的な話題を取り上げるなと思われるかもしれませんが、中国主導による一帯一路政策が進行する中、我が国も、東アジアにおいて、政治、宗教に全く関わりなく、国際的な地位を一層高め、世界につながる道を実現していかなければならないと思います。
 日韓トンネルを始発点とする高速鉄道やハイウェイが中国やロシアに延伸するにつれて、環日本海経済圏が形成されていく可能性があります。
 また、日韓トンネルに併設されるパイプライン等、高圧送電線によってシベリア産の天然ガスの輸入ですとか、電力の多国間融通が可能となり、エネルギー産業の発展も期待をされるわけであります。
 さらに、長崎、佐賀、福岡の地場産業のマーケットも飛躍的に拡大することが予想をされますし、先ほどの議論における九州新幹線西九州ルートのフル規格化への佐賀県のスタンスもおのずと変わっていくものと期待をされるわけであります。
 こうしたことから、知事においては、純粋に日韓トンネルの建設促進のための機運醸成に積極的に取り組んでいく考えがないか、お尋ねをいたします。

【中村知事】  この日韓トンネル構想といいますのは、佐賀県の唐津市から、本県の壱岐、対馬を経由して韓国に至るルートを中心に、複数の民間団体において検討などが行われておるプロジェクトであり、私も対馬勤務時代に関係者の方々からお話をお聞きしたことがございます。
 一方、また、県内においても「日韓トンネル推進長崎県民会議」が発足されており、シンポジウムの開催など、トンネルの実現に向けた機運の醸成等に取り組んでおられることはお伺いをしているところであります。
 一方、この日韓トンネルの建設が進んでいくということになりますと、まさに、2国間の国家プロジェクトとして推進されるということになってくるものと考えているところであり、巨額の建設費負担でありますとか、技術上の課題など、さまざまな課題も想定されるところではなかろうかと思います。
 しかしながら、現状は、まだまだ不透明な部分が多く、具体性に乏しいという状況ではないかと考えておりまして、国の動きなどもしっかり見極めていく必要があるものと考えているところであります。

【比良議員】  知事、この計画は単に夢物語の段階ではなくて、もう既に、これまでの関係者の努力により、先ほど申し上げました斜坑の掘削だとか、あるいは広大な用地の買収、そのほかに音波探査船による16万7,000キロメートルの海洋音波探査によって、既に海底の地形図とか、基本ルートの概略設計図までがつくられているんです。
 そして、本県でも、「日韓トンネル推進県民会議」が設立をされておりますし、九州全体でも、元九州大学総長の梶山千里氏を会長とする「日韓トンネル実現九州連絡協議会」が結成をされ、多くの議会人、財界人、有識者等が参画をしているわけであります。
 ご指摘のように、確かに予定される10兆円という事業費の財源の捻出は幾つもハードルがあることは予想に難くないところでありますが、そこはやはり大義と夢からはじまるものだと思います。
 戦後の国家的プロジェクトを着実に実施をしてきた我が国の力や、韓国側との事業費の分担、さらには、我が国や韓国側の大企業の出資によるPFI手法の組み合わせ等々考えると、先ほど申し上げた国家戦略をもってすれば現実的なプロジェクトとして捉えることができると思うのであります。
 目の前の新幹線問題に風穴を開ける一助にする、そして、本県の将来に新たな道筋をつくるという意味において、ぜひ知事には、これも政治家として積極果敢に取り組んでいただきたいと思うのであります。

 A 日韓海峡沿岸県市道交流知事会議の議題の柱とすることについて

 そこで、併せてのお尋ねですが、平成4年から「日韓海峡沿岸県市道交流知事会議」を毎年開催をしておられますが、この日韓海峡沿岸県市道交流知事会議の基本テーマとして、日韓トンネル計画の推進を本県として主張していくことができないか、この点についてお伺いをいたします。

【中村知事】  日韓知事交流会議におけるこの日韓トンネルの建設問題の議論につきましては、これまでも、平成15年に開催された会議において、韓国側の慶尚南道から日韓海底トンネル建設に向けた共同研究会の設立について提案があり、議論がなされたところであります。それに対しては、当時、「現時点では、具体性に欠けており、会議としてまとまって何かに取り組むにはまだ早いのではないか」というような意見が出されて、共同研究会の設立については見送られた経過があるわけでございます。
 先ほどお話をさせていただきましたように、まだまだ具体性に欠けるという状況でありますが、また、本県でのこの知事会議の開催スケジュールもあるところでありますので、これからの動きを見極めて、検討を進めてみたいと考えております。

【比良議員】  具体的に何か役割分担を持って、その事業として何か実施をしろという話をしているんじゃありません。こういった構想のもとのプロジェクトでありますから、これは、ぜひ、その機運を醸成をするというそういう役割を果たせないかということをお願いをさせていただいているのであります。どうぞ本県の将来の発展につながるテーマとして、地域振興の観点から、積極的な検討をぜひお願いをしたいと思います。

3、BSL-4施設の整備問題について

(1) 知事の主張の根拠について

 @ 平成28年12月定例会での知事説明


 昨年の11月22日、知事と長崎市長は、「国の関与が示された」、また、「住民の理解は着実に広がっている」として、BSL-4施設の坂本設置容認を表明をされました。
 国の関与というのは、国家プロジェクトとして推進をし、世界最高水準の安全性を備えた施設の建設と、安定的な運営及び万一の事故等、緊急な場合の必要な支援を指すと思いますが、そこで、知事は、この国の申し出、言葉に対し、何をもって確信を得たのかということであります。
 まず、何をもって世界最高水準の安全性を備えた施設であると、あるいは、施設となると判断をしたのか。換言をすれば、どのような施設であるからこそ、世界最高水準の安全性を有していると評価をしたのか。
 第2に、安定的な運営とは、どういった運営体制や運営方法であるから安定的な運営であると判断をしたのか。
 第3に、有事の際の必要な支援とは、どのような支援が行われるから、感染者や死者を出さないし、社会経済的なダメージも受けないと判断されたのか。
 さらに、住民の理解は着実に広がっているというのは、現在、坂本周辺7自治会が総意として反対の意思を表明し、かつそのほかにも施設に対する関心が高まって、54自治会の代表が建設反対を文書回答し、今後もさらに反対の自治会が増えることが予想される中で、どういう根拠に基づいて住民の理解が広がっていると主張されているのか。まずは、これらについて簡単に、簡潔に、要点のみお答えをいただきたい。

【中村知事】  BSL-4の建設問題でありますけれども、まず、世界最高水準の安全性を備えた施設の建設、これについては、我々もBSL-4を整備されるからには、そういった安全性の確保は最重要課題であるとの認識のもと、国に対する積極的な関与、いわゆる国のプロジェクトとして推進してほしいという要請をいたしてきた経過があるわけでありまして、それに対して、国の方からの回答として、「世界最高水準の安全性を備えた施設の建設について支援を行う」という方向性が示されたところであります。
 じゃ、なぜ、何をもってこの世界最高水準の安全性を備えた施設として確認したのかということでありますが、これはまだ、世界最高水準の施設をつくるわけでありますので、今、まだない施設であります。
 したがいまして、これから具体的に検討が進められる際に、長崎大学には世界的な権威が入った専門家会議というのが設置されております。そこでは、施設の構造の問題でありますとか、設備の問題、あるいは管理運営に関する問題、防災、あるいは耐震工学、地盤工学、サイバーセキュリティ―、バイオセーフティー、さまざまな観点からの専門家の皆様方によって、この世界最高水準に相当する計画が立案されてくるものと考えております。
 そして、さらに、その上で第三者的な立場の専門家からなる管理委員会が設置されますので、そこにおいて第三者の立場からチェックを進めていく。  併せて、地元住民の代表の方々も参加していただいております地域連絡協議会、これは私ども行政も参加をさせていただいている協議会でありますが、そういった場において議論を進め、世界最高水準の施設であるかどうかということについては、しっかりチェックをしていく必要があるものと思っているところであります。
 そして、安定的な運営等については、まだまだその運営に対するさまざまな課題があると思いますけれども、そこに対しても国の方で積極的な関与、支援を行うという姿勢が示されたところであり、そういったところを総合的に評価をして、事業化に協力をさせていただこうと考えたところであります。
 それから、万一の災害や事故といった緊急の場合の対応でございますが、これは本来あってはならない話でありますが、いろいろな科学技術の発展の過程の中において、リスクがゼロだということはなかなかあり得ない。むしろ、そういった安心感の上に事を進めることは好ましいことではないと考えているところであります。
 万々が一という事態を想定した場合に、一長崎大学だけでの対応には限界があると、そういうことから、国も全面的にこういった事態には支援体制を構築し、対応していただくというようなお話をし、その体制の確認ができたということであります。
 それから、住民の皆様方の理解の問題でありますけれども、やはりこれから、さまざま議論が進められていくわけでありまして、具体的な施設整備、あるいは運営に対する考え方が整理され、しっかりと住民の方々にも情報を提供し、理解を促進するための丁寧な説明を進めていく必要があるものと考えているところであります。

【比良議員】  私は、地方自治法上、住民の生命、それから健康、あるいは財産、そういったものをしっかり守っていくという立場にある者としては、この手のことについてはしっかり検証をして、そして判断をするという作業がデュープロセス(法に基づく適正手続)として不可欠ではないかということを言っているんです。
 今の知事の答弁は、まさに、国の主張を単にうのみにしているというか、あるいは、期待をしているというだけではありませんか。
 住民の生命・財産を危険から守ると、そのために必要な予防的措置を講じるという責任を果たさなければならない職責を持つ者としては、一歩立ち止まって検証することが必要なのではないんですか。そして、我々の過去の教訓としては、もはや安全神話はないということからスタートすべきではないかと思うんです。
 安定的な運営が行われるということについても、これも同じく国の主張を単にうのみにしているにすぎない。具体的にどういう実験や研究開発が行われるんですか。したがって、その運用において、万全なセーフティーネットが張られているという検証は全くなされていないわけでありましょう。これも、私に言わせると勇み足じゃないですか。
 ヒューマンエラーは必ず起きるという前提での重層的な安全策が講じられていかなければなりませんし、研究者や実験者の安全キャビネットばかりの安全策が講じられていても、対外的には意味がないということも明記すべきであるというふうに思います。
 有事の際の必要な支援がなされるといったことについても答弁がありましたけれども、万一の事故が起きた場合の善後策としてその支援がなされても、感染による失った命、健康被害、あるいは社会経済的な損失やダメージは戻らないのであります。今、知事の言われた主張は、不安視する住民にとって何の説得力もないと思います。リスクはゼロでないなら、そもそもリスクを負わなくてもいいようにする。即ち、つくらないということではないでしょうか。
 答弁を求めたいところでありますけれども、ほかにも多々議論がありますので、次の質問に移ります。

 A 平成29年2月定例会での知事答弁

 前回の定例県議会での一般質問の答弁で、知事は、「まず患者が発生した場合は、長崎大学が第一種感染症指定医療機関として迅速な診断・治療が可能である」と言われているわけでありますが、長大病院で既にエボラ出血熱やマールブルグ病、あるいはラッサ熱といったBSL-4施設で取り扱おうとしているウイルスに対する治療薬があるんですか。ないから研究開発をしようとしているんじゃないですか。
 また、「諸外国において、BSL-4施設が大学構内、あるいは病院に隣接する市街地に存在しており、近隣地域への漏出事故は報告されていない」と断定をされておりますが、これは真実ですか。
 加えて、「これから扱おうとしているウイルスについては、空気感染がない」と、これも言っておられるわけですが、これは本当ですか。併せて、要点のみ答弁をお願いします。

【沢水福祉保健部長】 まず、長崎大学の方で研究がなされているかということでございますけれども、それについては今から研究をしていくということで、まずは、エボラ出血熱等に対するそういう新薬とか、ワクチンとかは開発をされておりませんので、それについて、今後、長崎大学に設置するBSL-4施設で研究をしていくというのが一つの使命でございます。
 当然、もし仮に、今、国際的に移動が激しい話になりますので、仮に県内でエボラ出血熱の患者が発生した場合には、長崎大学病院の第1種感染症病床に入院をされまして、治療を受けることになります。
 そうしますと、やはり隣接するBSL-4施設において迅速な処置と治療効果の確認が可能ということになりますので、また、そして、検査のための病原体の搬送リスク等も低減されるということから、やはり坂本キャンパスへの設置については、一定の合理性があるのかなと思っております。
 それと、BSL-4施設で扱う一種病原体、これについては全て空気感染をしないということで理解をしております。実際、3万人の症例が発生した西アフリカのエボラ出血熱の流行があった時にも、空気感染はしないということで、一応そういう実態はなかったということもお聞きをしております。

【比良議員】  これについても、一々反論があります。
 まず、長崎大学病院でのその治療についての話ですが、長崎大学のあの病院では、エボラウイルス感染の迅速な検査キットが既に開発をされていますので、仮に陽性反応が出た場合は、感染の拡大については隔離等によって一定の措置が期待をされるわけでありますけれども、しかし、そもそも治療薬がないわけでありますから、長大病院といえども治療はかなわないのであります。院内感染のおそれもある、それが実態ではありませんか。
 次に、先行施設が市街地にあるということですが、まず、海外主要国のBSL-4施設の立地状況はどうかといったことを調べてみますと、アメリカのベセスダの国立衛生研究所やアトランタの国立疾病予防センター。これは広大な敷地に立地をし、近隣には個人住宅がほとんどありません。テキサス大学のガルベストン国立研究所。これはメキシコ湾に面した島に立地をしています。イギリスのポートンダウンにある国立応用微生物学研究センター。これは農村地域に立地をして、近隣には個人住宅はほとんどありません。
 これに対して、ボストン大学の国立新興感染症研究所。これは大学構内にありますが、BSL-4施設の設置計画に住民が反対をして、結局ボストン市は設置を禁止する条例を制定し、廃棄となったわけであります。
 それから、漏出事故の報告がないということでありますけれども、旧ソ連のスヴェルトロフスク市の生物兵器製造施設。ここからは炭疽菌が大気中に漏出をしまして、110名が感染し、住民66名が死亡しています。50キロ圏内における家畜被害の大惨事が発生している、これは明確に報告をされています。
 同じく旧ソ連のコルツォヴォというところの分子生物学研究所。ここでマールブルグウイルス感染事故が発生し、2名が死亡しています。
 また、ロンドンの衛生熱帯医学校では、天然痘感染が発生をし、2名が死亡しています。
 加えて、アメリカのフォートデトリック研究所では、25年間で423件の感染事故が発生し、3名が死亡したと報じられています。
 以上のことが真実であって、知事には、ぜひこうしたことを認識を新たにしてほしいと思うのであります。
 また、部長が言われたウイルスの空気感染はないということでありますが、ウイルスを操作する安全キャビネットと実験室からの廃棄は、HEPAフィルターを通して外部に強制排出される機構となっているわけでありますが、HEPAフィルターは0.3マイクロメートル径のろ過膜ですけれども、ウイルスの大きさは0.1ないし0.3マイクロメートルで、かつHEPAフィルター自体にはウイルスを不活化する機能はないのであります。
 そこで、HEPAフィルターから漏えいした病原体を含む廃棄は、主として太陽光の紫外線によって殺菌をされるといったことが期待をされているわけでありますが、そのためには、相当な時間を要するのであります。
 したがって、施設が市街地にあれば、住民に感染するおそれがあることは払拭できなのであります。これが科学的な事実です。
 これらについても、一々答弁を求めたいんですが、再考を強く求めて、次の質問に移りたいと思います。

(2) 施設計画に対する県行政としての必要な措置について

 さて、人体に最高度に危険なウイルスを取り扱うBSL-4施設については、国が言っているからと、あるいは大学がするからといって、自治体として何もしないというわけには断じてまいりません。なぜなら、先ほど申し上げましたように、地方自治法上、知事は、住民の福祉の増進のために、県民の生命、健康、財産を被害から守る義務を負っているわけでありまして、そのために予防的措置を講じなければならないからであります。即ち、自治体として、住民の生命の安全と健康保持のため、病原体等実験施設の安全性情報を事業者と共有をして、管理の実態を把握して、自らの責任を果たす必要があります。
 そこで、次のことを提言し、実施を強く求めたいと思います。
 まず、環境影響評価条例において、評価対象に病原体等実験施設、遺伝子組み換え実験施設、動物実験施設を加え、評価項目に病原体等の平常時、非常時の周辺環境に及ぼす影響を加える。また、環境保全条例において、環境保全に関する協定の対象事業に病原体等の実験、遺伝子組み換え実験、動物実験を加える。
 さらに、新たに、仮称ですが、遺伝子組み換え施設条例、あるいは病原体等実験施設規制条例を制定して、遺伝子組み換え規制法の順守、住民への説明会の開催、環境影響評価の実施、環境安全協定の締結、DNA廃棄物の処理に関する規程、排気ダクトのHEPAフィルターの現場性能試験規定、非常時の対策規定、報告及び立ち入り調査等の規定を盛り込む。加えて、感染症廃棄物の処理手続を条例化する。
 こうしたことを通じて環境アセスメントの実施やハザードマップの制定、避難レベルと対象範囲の決定、疫学調査の実施協定、避難訓練の実施協定、事故による健康被害への県民への補償協定等々を締結することなど、知事としての責務を果たし、説明責任を果たすことになると思慮いたしますが、見解をお尋ねいたします。

【沢水福祉保健部長】 ただいまのご質問でございます、関係条例、関係規程をというお話でございますけれども、まず、この長崎大学のBSL-4施設、これについては、そのBSL-4建設の基本構想というのがございます。現在、中間まとめということをされておりますけれども、そこの中でリスクアセスメントを行うということで、いろんな実験動物でありますとか、あるいは病原体の管理とか、自然災害とか、そういう具体的なリスクを想定いたしまして、まず自ら評価、検討をし、それで地域住民も参加する地域連絡協議会、あるいは長崎大学に新たに設置しております専門家会議、それと国の管理委員会で協議、結果を重ねまして、ハード・ソフト両面において反映をさせていくということで対応を考えているとお聞きしております。
 また、遺伝子組み換えの実験については、これは法律で決まっておりまして、「遺伝子組み換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」ということで、これは遺伝子組み換えの技術を、実際に技術を使った研究を行おうとする場合には、その研究計画は事前に厳しい審査を経るということになっておりますので、それで国が承認をするという規定の制度が今ございますので、それで対応できるということで考えてございます。

【比良議員】  先ほどからそうなんですけれども、国がやる、あるいは大学が当事者だからというようなそういう姿勢、立ち位置から一歩も踏み出していませんよね。地方自治法上、住民の生命、健康の安全を守るという、維持をするというその責務を果たす者として、どういう取組を主体的にやっていくのかと、こういったことが今問われているのではないか、必要なのではないかなという、そういう質問をしているわけであります。これはやるべきですよ。
 外国がいったいどうなっているかというと、イギリスでは、政府の保健安全局の定める有害物質規制規則で認可を受けなければ設置をできないという仕組みになっている。
 ドイツでは、BSL-4の実験は人間の健康と環境にリスクを及ぼすと遺伝子工学法で規制をされておりまして、遺伝子工学施設は、設置に際して環境影響評価書の提出と公聴会の開催が義務化され、さらに、国の認可が必要となっているわけです。
 また、アメリカでは、全てのバイオ施設は環境影響評価書を公表し、公衆の同意を得なければ差し止め訴訟で敗訴になるという判例が確立をしています。
 カナダでは、カナダ環境影響評価法が成立をし、バイオ研究所は、同法のもとに環境影響評価書の提出と審査を受け、公聴会等で公衆の同意を得なければならないとされているわけであります。
 このように、設置に関しては厳格なデュープロセスが要求をされているわけでありまして、国が国家プロジェクトとして進めるということだけで、「はい、そうですか」と言って、住民の安全・安心を守ることを使命とする者が主体的な取組をしないなどというところはどこもないわけであります。
 何もしないということは、住民の安全・安心を守る義務を有する自治体の責任者として、万一の事故により被害が生じた場合は、不作為による損害賠償責任が生じるのではないか。
 また、住民の暮らしの安心を損ない、ストレス曝露を発生させるような危険施設を適正な法的手続きを経ずに認めたということで、事故は発生しないまでも、普段の精神的不安と障害に対する損害賠償を求められることになるのではないかとも思うのであります。
 こうしたことも十分念頭に置いて、知事としての主体的な責任ある取組を強く求めるものであります。本来求められる自らの役割を果たさないというのは、私に言わせると無責任ではと言うだけでは済まされないと思うんですが、再度知事の見解をお伺いします。

【中村知事】  このBSL-4の建設問題につきましては、これまでもさまざまなご議論をいただいてきたところでありますが、今日のようにグローバル化が進む社会にあって、やはりいつ第一種感染症の事例が県内で発生するという状況に直面するかわからない。
 したがいまして、そういった事態に対処するためには、しっかりとした体制を構築しておく必要がある。したがって、このBSL-4施設の必要性そのものについては、あらかた理解がいただけてきたのではなかろうかと考えております。しかしながら、その設置場所について、さまざまなご懸念が生じているものと理解をいたしているわけであります。
 先ほどのお答えの中でも申し上げましたけれども、まずは施設の通常の設置管理主体である長崎大学、しかし、それでもやはり足らざるところが生じるかもしれない。国の積極的な関与、国家プロジェクトとしての推進、こういったことを求めてまいりましたし、また、私ども地方自治体として、目をつぶって適正な法的手続きを経ずにこれを認めるといったことは決してないわけでありますので、住民の安全・安心の確保というのは最重要課題であると考えており、したがって、さまざまな施設の整備、あるいは運営等に関しては、地方行政の立場からもしっかり関与していく必要があるものと思っているところであります。
 万が一の場合の事故、これについては、やはり行政としての対応もこれは求められてくるわけでありますので、主体性を放棄して、一切施設の管理者に任せてしまう、そういった考え方はないところでありますので、その辺についてはご理解をいただきたいと考えております。

【比良議員】  まず、知事が言われた1点目については、それは国内でのウイルスの伝播の話なんですが、基本的にこれは水際作戦というか、検疫の問題ですよ。大学でどうこうという話じゃないですよ。
 それと、決して適正な法的手続きを経ずに、何もしないというわけではないというお話なんですが、私が言っているのは、国や大学がこうだと、そんな国の行政として、あるいは知事として意見を申し述べていくんだと、より安全対策を講じるようにと、そういう話なんですけれども、そうじゃなくて、先ほど言ったみたいに、環境影響評価条例だとか、そういったいろんなものを本県自体で条例化をして、こういった施設についての事前影響評価を取るとか、あるいはしっかりした検証をしていくとか、そういう主体的な役割を担うべきではないかというそういう主張をしているんです。外国においてもそうであるように、そういった取組があってはじめて、住民の安全・安心に資するということにつながっていくんじゃないでしょうか。

(3) 治療薬の開発状況から見た施設建設の必要性について

 治療薬の開発状況について、ちょっと触れさせてもらいたいと思います。
 BSL-4施設で取り扱われるウイルスの中で最も致死率の高いエボラウイルスについてですが、このワクチンについての世界での開発状況について、ちょっとお知らせをさせていただきたいと思うんです。
 第一に日本の富山化学工業で開発したファビピラビルというワクチンがエボラウイルス感染実験で有効である可能性が認められておりまして、現在、西アフリカのエボラウイルス病の発生国で臨床試験が行われております。
 第2に、アメリカのアレルギー・感染症研究所とグラクソ・スミス社が共同開発をしたエボラワクチンが、エボラウイルスの感染に対して長期的な防御効果が認められておりまして、同じくエボラウイルス病発生国での人に対する臨床試験が既に行われております。
 第3に、カナダの国立微生物学研究所公衆衛生局が開発したエボラワクチンは、サルでの感染防御実験及び人を対象とした臨床試験が急速に進められていて、実用化が期待をされているわけであります。このほかにも多くの効果薬が世界各国で開発中であると報じられているわけであります。
 即ち、こういう先行的な状況が現実にある中で、長崎大学のBSL-4施設は一体何のために設置をされようとしているのか。その必要性と意義を認め得ないわけでありますが、一体具体的にどういう研究開発をして、これらの先行事例から見て、あえて取り組む意義は何なのか、知事は承知をされておられるんでしょうか。

【沢水福祉保健部長】 ただいま、エボラ出血熱に対する新薬の研究開発の部分を議員からご紹介がございましたけれども、確かに富山化学工業のファビピラビルであるとか、あるいは米国メーカーのジーマップとかも臨床試験された事例ということで、まだ途上の部分だと認識をしてございます。
 ただ、今の話はエボラ出血熱だけですけれども、このBSL-4で扱う第一種感染症、それ以外にもラッサ熱とか、あるいは、マールブルク熱とか、5種類ぐらい多分あると思いますけれども、そこについてはいまだに治療薬が、治療法が確立されていないというのが現状だと認識をしております。
 もう一つは、海外から感染症の侵入が脅威になるという中で、やはりそこについては国際感染症研究拠点の整備計画、この中で国内におけるBSL-4施設の整備計画と人材の育成が必要であるというようなことを受けまして、長崎大学は研究開発、あるいは人材育成、そういうことに取り組むというのが今回の趣旨でございますので、そこはご理解をいただきたいと存じます。

【比良議員】  今、マールブルグ病とか、ラッサ熱、そういう話もしましたけれども、世界の情勢から見て、長崎大学において、危険を侵してまで、殊さら何をしようとしているのか。その意義をどう示そうとしているのか。具体的なものが何も見えないじゃないですか。
 そういう中で、住民の理解を得られないままに箱物づくりが、市街地、住宅密集地の中で行われようとしているわけであります。
 何をするのかは、一握りの研究者に委ねられていて、県も市も具体的なことは知らない。なのに、施設建設を許容し、安定的な運営が確保されるんだと言い切るというのは、実際として、私に言わせると余りにも乱暴で拙速なやり方だと言わざるを得ないと思います。外野席から意見を言うということだけでは済まされない問題ですよ。多くの論点整理がなされてない状況においては、白紙に戻して再考すべきではないかと思います。
 翻って、現在、武蔵村山市にある国立感染症研究所においては、BSL-4施設が稼働中で、エボラ出血熱の診断法も確立し、実績もあるわけであります。したがって、この施設以外に最高度に危険な病原体の国内拡散と生物災害が発生する可能性の危険を冒してまで、あえて長崎大学でこの種の病原体を取り扱うことが必要不可欠とはならないわけであります。
 ウイルス分離をはじめ、最高度に危険な病原体のより高度な取り扱い実験の全ては、アフリカ現地に総合的な施設を建設し、WHОのような国際機関による国際管理によって運用されるべきであって、日本にない最高度に危険な病原体を、人為的にこの長崎に故意に持ち込み、その結果、長崎に住む我々が、また長崎の街そのものが、生活上のリスクを何の手も打たないままに抱え続けなければならない。そして、万一の事故の犠牲になる覚悟が必要な街として、子や孫の世代に引き継いでいかなければならないというのは、とても耐えられないことでありますし、自治体の取るべき道ではないということは明らかであります。
 大学、県・市ともに、白紙撤回すべきだということを強く訴え、残念ながら、時間でありますので、ひとまず今日は終わらせていただきます。また、別の機会で引き続き議論をしたいと思います。

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