たかひら元 長崎県議会議員 高比良 元(たかひら はじめ)オフィシャルサイト 
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たかひら元の県政リポートをご報告します。

平成28年6月定例月議会一般質問 (平成28年6月掲載)
 先の第1回(2月)定例県議会に引き続き、第2回(6月)定例県議会の本会議で一般質問を行いました。

 質問事項は以下のとおりですが、県政のアップツーデートな問題だけに知事との丁々発止の議論となりました。

質問事項一覧
  1. 熊本大地震を教訓とする地震等災害への備えについて
  2. 県庁舎跡地問題について
  3. 被爆体験者の援護対策について
  4. 県立亜熱帯植物園の存廃について
 以下、議事録(語句を一部修正)を掲載しますので是非ご一読いただき、ご意見等いただければ幸いです。



1.熊本大地震を教訓とする地震等災害への備えについて


 県民主役の会、比良 元です。
 質問通告に基づき、第一に熊本大地震を教訓とする地震等災害への備えについて質問いたしますが、まずもってこのたびの大地震により、お亡くなりになられた皆様に対しまして、心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様には謹んでお見舞いを申し上げる次第であります。

(1)災害予防計画について。

 さて、本題に入りますが、この熊本大地震を教訓として、また、昭和57年の長崎大水害の経験からも、この際、地域防災計画を徹底的に見直し、また、検証することを通じて、計画を収れんさせ、県民のセーフティネットをより高めていかなければならないと思います。
 長崎県地震発生想定検証委員会の想定活断層による震度予測では、地震規模マグニチュード7.7、震度6強を最高に、県南地区を中心に震度5以上の地震の発生が各地で予測をされております。
 一方、本県の土砂災害危険個所は、地域防災計画によると、保全対象人家1戸以上について、国交省所管分で土石流、危険渓流4,914カ所、急傾斜地崩壊危険箇所8,497カ所、地すべり危険箇所1,169カ所、林野庁所管で山腹崩壊危険地区1,520カ所、崩壊土砂流出危険地区1,019カ所、地滑り危険地区149カ所、合計1万7,268カ所が指定をされております。
 これらについては、国庫補助事業等で砂防事業等が毎年行われているところでありますが、対象箇所数が膨大なため、地震や集中豪雨等によって、いつ土砂災害等に見舞われるかわからないという現状にあるわけであります。
 したがって、今後、通常砂防事業等を重点的、計画的に進めていく必要がありますが、指定箇所全体をカバーすることは、短期的には、物理的、経済的に不可能に近いと思います。
 そこで、過去に土石流災害を受けた地区や、受けるおそれの高い地区に、例えば、雨量計等をより多く設置し、いち早く危険度を把握し、地域住民の自主避難や市町の警戒・避難態勢の確立に役立つ情報として提供するシステムを幅広く構築することが重要だと考えますが、まずはこの点について、現状と対策をお尋ねいたします。

土木部長答弁

 本県は、急峻な山地、谷地、がけ地が多いといった地形から、議員ご指摘のとおり土砂災害危険個所が非常に多い状況です。このため、住居や公的施設等への影響を勘案しながら、順次、砂防施設の整備を進めておりますが、整備が追いついていないというのが現状でございます。
 そのため、土砂災害に対する警戒・避難活動を支援する取組といたしまして、県内207カ所に設置した雨量計のデータから判定される土砂災害の危険度情報をインターネットで提供しております。
 今後は、蓄積された土砂災害の実績により、さらに、発生予測の精度を高めるとともに、各家庭に届きやすいテレビを通じた情報提供の実現に向けて取り組んでいるところでございます。

 より多くの施設系と雨量計は設置をして、多角的に情報ツールを活用しながら、即座に伝達をしていくと、これが何より大事だと思いますので、よろしく取組をお願いしたいというふうに思います。
 ところで、住民への災害危険区域を含む防災マップの周知が必要だというふうに思います。これは、どれだけ普及し、防災意識の高揚につながっているのか、この際検証をしてみる必要があるというふうに思います。
 熊本大地震の被災者へのアンケート調査では、「防災マップを見たことがない」と答える人が多かったと報じられておりますが、県民への周知のための取組状況と今後の対応について、お尋ねいたします。

土木部長答弁

 県では、土砂災害警戒区域の指定を推進するとともに、地域住民の円滑な避難行動につなげるため、平成26年度から市町が作成する土砂災害ハザードマップの作成支援を行っております。
 この結果、平成27年度末現在で、指定箇所数1万5,000カ所に対するハザードマップの作成率は約7割になっております。そのうち、各家庭に配付された割合は、現状で約6割の状況です。
 また、ハザードマップの重要性、有効性について、市町との防災関係会議や、土砂法の警戒区域指定時に行える住民説明会で説明を行うとともに、ハザードマップを活用した防災訓練等を通じて、県民への普及啓発を図っているというところでございます。今後とも、市町や防災部局と緊密に連携しながら、さらなる普及に努め、県民の安全・安心の確保に取り組んでまいります。

  これは市町の努力によるというところが大きいんだろうと思うんだけれども、せっかくつくった防災マップも公民館等には掲示をしているけれども、なかなかそれぞれの住民の手元には届かないといったような状況もあるやに聞いているので、そういったところは市町の取組をさらに加速させるように、県としても促進方をお願いしたいというふうに思います。
 次に、地震防災研究事業5カ年計画等における各種主要施設の耐震化についてであります。
 公立高校では、全ての学校で耐震化工事が終了しておりますものの、小中学校では、いまだ6市の70棟が基準未適となっていると。国の補助率がかさ上げされております平成32年度までに全て完了すべきだというふうに思いますが、どうか。また、私立の小中高校、それから幼稚園、保育園の実態はどうか、耐震化がなされてない箇所には、具体的にどうやって促進をしているのか、併せてお尋ねをいたします。

教育委員会教育長答弁

 平成28年4月1日現在の県内市町立小中学校の耐震性のある建物は、2,193棟中2,123棟で、耐震化率は96.8%となっております。また、議員ご指摘のございました耐震性のない、残る70棟のうち33棟は、平成28年度中に改修や建て替え及び解体される予定であり、本年度末の耐震化率は98.3%となる見込みであります。
 残る耐震性のない建物についても、市町においては、今後、統廃合や老朽化に伴う建て替えなどが計画されており、順次耐震化が図られる予定でありますが、現在のところ、具体的な完了年度が未定の市もあります。
 国においては、学校施設環境改善交付金のかさ上げ措置を本年度から平成32年度まで5年間延長しておりますので、その制度の活用により、できるだけ早い時期に完了するよう、県としては、引き続き、設置者である市町に耐震化の前倒しを要請してまいる考えであります。

総務部長答弁

 私立小中高等学校の耐震化の状況ですけれども、平成28年4月1日現在で156棟の建物のうち、耐震性があるものは120棟となっておりまして、耐震化率は76.9%となっております。
 このため、耐震化の促進を図っていきますため、今年度から、緊急防災・減災事業債を活用し、指定避難所とされている施設につきましては、補助率を6分の1から3分の1に引き上げ措置を行っているところでございまして、今年度はさらに13棟の耐震化により、耐震化率を85.3%に引き上げることを目指しまして、現在、国の予算の確保に働きかけを行っているところでございます。

こども政策局長答弁

 私の方からは私立の幼稚園、保育園、幼保連携型認定こども園における耐震化の率を回答させていただきます。
 平成28年4月1日現在で、幼稚園で72.2%、保育所87.7%、幼保連携型認定こども園86.4%の耐震化率となっております。
 耐震化が未実施の施設の中には、少子化等により将来の見通しが立ちにくい状況にあり、資金面での手当てが難しいことなどから、耐震化の工事を見合わせている施設も見られます。
 県といたしましては、特に、耐震化が遅れております幼稚園に対しまして、今年度から避難所の指定を要件として、補助率のかさ上げを行うなど、未耐震の施設に対しまして、市町とも連携し、引き続き耐震化の実施について働きかけを行っていくことといたしております。

 耐震化については、例えば、ほかに病院でありますとか、あるいは県営アパートとか、そういったところがあるのでありますけれども、ちょっと時間の関係で先に進みたいというふうに思います。
 ところで、防災の観点から、短期間にいろいろ手を打っていくということについては、物理的、経済的になかなか無理があろうというのが実態だというふうに思います。その意味では、二次災害も含めて、減災の観点からソフト・ハードの取組をしていくことがとりわけ重要だというふうに思います。いわゆる災害の最小値化への取組いかんであります。
 そのために、いろいろなシミュレーションを多々やりながら、可能な実効策を講じる必要があるというふうに思います。例えば、住家をより安全なところにシフトをする都市政策、あるいは住宅政策を進めながら、空きスペースを一次防災の拠点とすることや、あるいは、公の情報ネットワークと民間のSNSを含めたコンピューターのネットをつないで、情報連絡の多様化を図るということ。さらには、自主防災組織のカバー率や役割意識、個人の防災意識を醸成するといったことや、避難や物資輸送について、本県としては、特に、海上輸送の活用や避難所として大型船舶を借り上げるといったこと。さらには、家屋の危険度判定や、罹災証明等の行政の事務処理の迅速化のための体制を確立する等々であります。
 熊本大地震を教訓として、こういったいろんなことが想定されるわけでありますが、このうち、本県においては、特に、集中豪雨による災害を想定した取組が特に肝要だというふうに思います。水害に対する備えとしては、日本のモデル県ともなる取組があってほしいというふうに思います。災害の最小値化のために、もっとなすべきことがあるというふうに思いますが、知事にお尋ねいたします。

知事答弁

 今回の熊本地震においては、さまざまな課題が指摘されているところでありまして、県民の防災意識の問題、自主防災組織率の課題、被災者のニーズの把握、情報発信、罹災証明でありますとか、建物の危険度判定にかかる人員不足など、そういったもろもろの課題が顕在化してきているわけでありまして、県といたしましては、こうした課題について、それぞれの担当部署で検証を進めて、地域防災計画にしっかりと反映をさせていく、そして、事前に対応が必要な部分については、これからの政策の中に反映させていかなければならないと考えているところであります。
 また、併せて、市町、あるいは関係機関との連携を強化しながら、インフラの老朽化、耐震対策などのハード面、そして、防災意識の問題等を含めたソフト面、両面から災害の被害を最小限にとどめることができるような対策を推進してまいりたいと考えているところであります。

 本県において、災害を研究して、その成果を各分野において浸透させるための人や、あるいは組織というのはどういうふうになっているのか。
 災害経験を科学的、あるいは工学的に分析をし、さらなる技術構築をしながら、再発に際しても災害の程度を少なく抑えるための先回りの予防的措置や住民に対する減災のための意識づけや訓練を定着させるといったことが、私としては何より重要だというふうに考えているわけです。この点も含めて、もう一度知事の考えをお聞かせいただきたいと思います。

知事答弁

 災害発生が一旦生じてまいりますと、直ちに対応するというのは行政側、あるいは民間側においても非常に困難な状況に直面してくるわけでありますので、あらかじめ想定される場面を思い描きながらシミュレーションをし、予防をしていくことが極めて重要であると、こう考えております。したがいまして、それぞれの知見を有する皆様方との意見交換などの場を設けながら、これからの対策に活かしていかなければならないと考えているところであります。

(2)災害応急対応について。

 次に、避難所の確保、整備、運営等について、お尋ねをいたします。
 地域防災計画では、避難所について、公共施設については非構造部材も含めて耐震化を図るとともに、防災拠点として必要な機能整備を行うと。特に、学校施設については、避難所としての利用を想定した施設整備に努め、併せて必要な設備や機能の整備を図るというふうにされています。
 これらについて、指定避難所の施設、設備、機器等の整備の充足率はどうなっているのか。併せて、学校はもとより、施設管理者の災害時の対応スキルを身につけさせるための取組はどうなっているのか、併せてお尋ねいたします。

福祉保健部長答弁

  指定避難所として指定されております学校におけるハード的な部分の耐震化率につきましては95.2%、同じく公民館等については64.5%ということになっております。また、避難所における設備、あるいは機器の整備につきましては、これは、地域防災計画はもとより、国の方からも避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針というのが示されておりまして、毎年、国の説明会を受けまして、その後に市町に対して担当者会議等の場で同指針に基づいて説明をいたして、対応の依頼を行っておりますが、今回の熊本地震を踏まえまして、整備状況の調査を行うことといたしております。
 それと、避難所の施設管理者等を対象とした研修、あるいは地域住民の参加するワークショップ等の実施、避難所生活が長期化した場合などの、それぞれの各段階での対応についても、国の指針に基づきまして、これも市町に対しまして担当者会議で説明をして、対応の依頼を行っておりますけれども、これも同様に今後の実施状況を調査を行うということにしてございます。

 今回の熊本の大震災の中で、ある避難所においてはYMCAが指定管理者になっておって、こういう災害時の対応についてのスキルを十分指定管理者が身につけておったといったことによって、避難所の運営が円滑に行われたといった事例があります。他方、そうでないところについては、混乱がかなり惹起されたというようなことも聞いておりますので、今、福祉保健部長から答弁があったことについては、さらに加速を図るように、ぜひお願いをしたいというふうに思います。
 ところで、今回の熊本大地震では、想定を超えた多くの被災者が避難所に集まり、陣取り合戦の雑魚寝状態、人があふれ、車中暮らしの人もいるという実態でありました。
 なぜ多くの人が避難所にいるのかというと、精神的、肉体的苦痛を抱えながらも、そこにいなければ情報や支援物資が得られないからであります。
 今回の大地震でも支援物資が余るところと、逆に届かないところの差が顕著に出ました。これらの教訓を活かすには、指定避難所以外にも予備的な避難所をより多く確保し、被災者が避難生活を送れるため必要なシステムを構築しておく必要があるというふうに思います。そのためには、情報通信の確保と支援物資の移送の確立が不可欠であると思いますが、このことについて見解を求めます。

福祉保健部長答弁

 避難所につきましては、市町が平時から必要数を指定しておくこととなっておりますが、災害時に地域の大多数の住民が指定避難所に避難してきた場合の対応、あるいは、在宅等での避難を余儀なくされた方々に対する対応については検討が必要であろうかと考えております。
 そのためには、ご指摘のとおり、避難所と災害対策本部間等での情報伝達の方法の確保や、あるいは、必要な物資を避難所等に届けるための支援物資の移送体制の確立が不可欠であると考えておりますので、今回の熊本地震での課題を踏まえまして、今後、市町とも協議を行いながら検討してまいりたいと考えております。

 次に、避難所の運営に限らないんですけれども、大規模災害の発生によって、今回も全国から多数の、あるいは海外からも含めてボランティアが駆けつけております。しかし、今回の大地震では、余震が続いたということもあって、一定期間、災害ボランティアの受付がなされなかったと。ボランティア団体に知恵や行動力があっても、役所や社協は受け付けをしなかった。そのために当初のボランティアは点の活動でしかなかったといったことが実態だと聞かされております。
 国際的な災害ボランティアとして、韓国経由である有名な団体が入ったということでありますけれども、そこはなかなか情報も得られないままに、そのまま帰ってしまったという、そういうふうな実態もあったといったことも聞いています。
 安全の確保や計画的な活動の確保といったことが手伝ってこういったことになっているというふうに思いますが、それでは被災者にとってみれば、いわば被災者は蚊帳の外に置かれてしまうということになります。
 もっと早期にボランティア団体で協力して、ボランティアを有効に活用するやり方、例えば、情報提供の仕方を事前に整備しておくとか、あるいは、また、可及的速やかにボランティアセンターを開設するというようなことが必要だというふうに思いますが、この点についての考え方をお尋ねいたします。

県民生活部長答弁

 本県では、災害が発生しました際には、長崎県総合防災ポータルにおきまして、被害状況、避難状況、そして道路交通規制状況などを随時発信していくことといたしております。
 一方で、被災地におきまして災害ボランティア活動が的確に行われますためには、今回の熊本地震の教訓を踏まえますと、災害ボランティアセンターを直ちに開設することが重要であります。
 このため、センターの開設手順等を定めました活動マニュアルを策定いたしますとともに、センターの開設に当たりましては、実務経験のあります災害ボランティアコーディネーターの協力を得ることとしているところでございます。
 センターを直ちに開設することによりまして、被災地支援に必要な情報の収集・発信を行いまして、災害ボランティア活動の円滑な推進に取り組んでまいりたいと考えております。

(3)災害復旧計画について。

 最後に、被災者の生活確保に関してお尋ねをします。
 家がなくなったために避難所から戻れない人たちのためには、応急仮設住宅の建設の必要になります。この建設用地は、地域防災計画では、市町があらかじめ定めた建設予定地のうちから、災害の状況に応じて選定をするということになっています。しかし、熊本では、実際は建築予定地が定められていないところも多く、予定地を確保するところから作業が始まって、したがって入居がかなり遅れるというそういう結果となっています。予定地だけでは足りないといった状況や、予定地に予定どおり建てられないといったような例もあります。この点、本県の状況はどうなっているのか。また、事前の必要戸数の総定数を建設予定地は満たしているのか、併せてお尋ねをいたします。

福祉保健部長答弁

 応急仮設住宅の必要者数につきましては、過去の被害想定から人口の5%と想定をしておりまして、現在の推定人口約130万人から算定いたしますと、必要者数は約7万人になります。県の防災計画におきましては、応急仮設住宅の建設用地については、市町と連携をして、あらかじめ選定しておくということになっておりまして、県・市町の所有地等について、平成22年2月に応急仮設住宅の建設可能用地リストを作成しているところでございます。このリストでは、敷地面積で合計約257万平方メートルが建設可能用地ということになっておりますが、標準的な仮設住宅の部分で単純に算定いたしますと、戸数で約3万6,000戸分、入居可能人数で約10万8,000人分の仮設住宅の確保がされるということになっております。
 しかしながら、前回の調査から一定期間が経過しているということもございますので、今後、改めて調査を行い、市町とも連携しながら、仮設住宅の建設用地の確保等にも努めてまいりたいと考えております。

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2.県庁舎跡地問題について


(1)長崎市の提案の取り扱い。

 次に、県庁舎の跡地活用問題についてお尋ねいたします。
 ご案内のとおり、県庁舎跡地に長崎市役所の移転をということをめぐる住民投票条例案が、約3万人の有権者の署名に裏打ちをされて、去る5月25日、長崎市議会に上程をされました。
 条例提案者である田上市長は、「これまでに県議会や市議会の論議も踏まえて慎重に検討を重ねてきた結果、公会堂跡地に市役所を建設するという方針に至ったから、条例案には反対である」という意見を述べておりますが、市議会では、3万人近い署名は重いという考えで一致していると報じられておりますものの、「市民の声を聞いて行政運営に活かすべき」と賛同する者と、「市庁舎を県有地に移転できるのか見通せない中で、住民投票を実施する意味があるのか」と疑問視する者に分かれ、所管の委員会は継続審査というふうになりました。
 そして、いみじくも昨日、市議会の所管の委員会が開催をされ、委員会としては、条例案は否決をしたとのことであります。しかしながら、本会議での採決がまだ残っておりますので、最終的に決着はついていないというふうに思います。
 市議会の所管の委員会で否決した要因は、先般、市議会の議長等が県を訪ねた折、協議後に、「県は、今さら、県庁舎跡地に市役所をという話にはならないとの立場」と報道陣に語り、かつ「市庁舎移転を協議できない時期まできていると受け取った」と市議会議長が委員会で釈明したことが大きいというふうに聞いております。そのため、県庁舎跡地の活用は、既に方向性が出ており、市の庁舎を移転するのは困難として条例案を否決したと。
 しかし、昨日の審議で、知事は、これまでの経緯を説明したものの、「市庁舎をどうするかは市や市議会の問題であり、県として土地を貸す、貸さないという議論以前の問題であると答えたと聞いている」と答弁をされました。認識というか、受け止め方、発言が違うわけですよね。
 さきに県の意向を確認する必要があるという市議会議員の主張には、私は、本来は住民投票後の問題ではないかと思うわけでありますが、それはそれとして、一定知事の考えを、再度、公式の場において確認をしておきたいというふうに思うんです。そうでなければ、一定の、一連の動きの中で、県としては大変不本意だというふうに思うからであります。
 そこで、今からちょうど2年前の平成26年6月定例会で、私がこの県庁舎の跡地活用問題をただした時に、知事は、まず、「県庁舎の跡地活用については、平成26年4月に県庁舎跡地活用検討懇話会から提言をいただいたところであり、現在、その提言を踏まえつつ、具体的な検討に着手した段階であって、公会堂代替施設を県庁跡地に整備するということについては、県としては何も決めていないし、また、具体的な提案もいただいていない状況である」と答えられました。
 しからばということで、私の提案として、県庁舎の跡地には、長崎市のまちの成り立ち、あるいは、この地がこれまで果たしてきた役割、今でも市の中心部の人たちが県庁移転に反対をする理由、加えて、県庁舎が移転した場合には本館だけでなく、別館や県警本部庁舎、新別館、あるいは、民間の多くの借り上げビルも空き家になり、人がいない、まちが動かないということになってしまうおそれがあるということ、そして、また、県としては、新たな箱物整備のために巨額の財政投資をしなくてもよい等々を総合的に勘案する時は、県庁の跡地には市庁舎を他の公共施設と合わせた複合的な施設として建設することが最も望ましいと考えるので、具体的に今は何も決まっていないのであれば、跡地活用の検討の中で市庁舎のことも俎上に上げてはどうかと質問をいたしました。
 しかし、それに対して知事は、「県庁舎跡地活用検討懇話会の提言を踏まえつつ、県・市で連携を図りながら検討を進めていくということになる」ということを前置きをしながら、「市役所の庁舎の移転については、市の方から具体的な提案は一度もいただいたことがない」というふうに答えられました。つけ加えて、「市の庁舎をどこに建設するかということについては、長崎市にとって極めて重要な事項であり、まずは市の意向を大切にしていかなければならないのではないかと考えている」とも述べられたのであります。
 しからば、今日、仮に市議会の本会議で、長崎市が住民投票条例を制定をして、そして、その結果、県庁舎の跡地での市庁舎建設の住民の意見が多数となったことをもって、市として市庁舎建設の候補地、予定地の一つとして県庁舎跡地を考えたい、ついては、県に県庁舎跡地での市庁舎建設について検討の俎上に上げてほしいという正式な申し入れがあった場合、知事はこれを受けて、現在、検討している作業に加えて、そのことを俎上に上げる考えがあるか、お尋ねをしたいというふうに思います。

知事答弁

 この県庁舎の跡地活用の問題については、先ほど議員もお触れになられましたけれども、これまで県議会、あるいは2度にわたる懇話会からの提言などの経過を経て、去る2月、県議会に対して、「広場」、「交流・おもてなしの空間」、「質の高い文化・芸術ホール」といった3つの方向性をお示しをし、その後、まちづくり・経済雇用対策特別委員会を設置していただき、ご議論をいただいているところであります。
 先ほど、お触れになられましたように、この間、長崎市からは、「県庁舎跡地に市役所を」というご提案は一度もいただいたことがなかったところであり、そもそも、市役所の位置については、まずは市や市議会で議論していただくべき課題であろうと考えております。
 仮の問題として、市から県庁舎跡地に市役所を建設したいと申し出があった場合にどうするのかというお尋ねでありますけれども、仮定のお話であり、この場でお答えいたしかねるところであります。

 知事としては、これまでの経緯からも、今言われたような答弁になることは予測にかたくないところであります。しかし、これまでの検討経過があるかもしれませんけれども、証文の出し忘れということで済ませてはならんというふうに思うんです。
 住民投票という直接請求によって、まさに地方自治における住民の参政権の行使によって得られた結果として、市民の多数が県庁舎の跡地には市役所がいいということになった時は、自治体を運営する者は、最大限それを受け止めるのは民主主義と地方自治の基本だというふうに私は思うんです。ましてや、検討作業は、いまだ半ばであります。
 もちろん、市としてもそういったことを県に申し入れるには、他の問題も手伝って、腹をくくらなければならないでしょうが、そうした過程を通じて、正式に県に申し入れがなされた時は、民主主義のルールとして、県としてもこれを受け止めて、中身について、検討や議論をしていかなければならないのではないでしょうか。
 市民であって県民でありますし、県内の3分の1の人口を占めるところからの申し出は、率直に受けてしかるべきだというふうに私は思います。
 しかし、今、住民投票条例も成立をしていないし、ましてや、投票結果もわからないという中で、したがって、長崎市から正式な申し出もないままに、現時点で県庁舎の跡地に市役所を建てられる可能性があるのかと尋ねられても答えようがないし、これまでの経緯だけで言えば否定的な言い方にしかならないと、それはそのとおりだというふうに思います。
 だから、私は、今すぐ市役所移転の問題を自主的に検討の俎上に上げろと言っているのではありません。繰り返しになりますが、あくまで一定の民主的なプロセスを経て、市からの申し入れが正式になされたとした場合の知事の立ち方を聞いているのであります。仮定の問題には答えられないといったことではなくて、立ち方として、知事の答弁を再度お願いをしたいと思います。

知事答弁

 経過については、先ほど申し上げたような経過にあるわけでありまして、そういう現状、経過を踏まえて、まずは市の方でご判断をいただく必要があると考えております。その後で、市のご判断として、県にお申し出をいただいたら、その段階で検討をしてまいりたいと思います。

 承知しました。否定も肯定もしないといったことでありますけれども、逆に言えば、その意気込みいかんの問題だということだというふうに理解をします。
 それでは、少し質問を変えますが、懇話会の提言にあるホール機能のことですけれども、「ホール機能については、長崎市が公会堂の代替施設の建設を申し入れる中で、同じく長崎市が計画しているMICE施設のホールとの重複を避ける必要がある。ついては、MICEのホールの内容が示されていない、オーソライズされていない以上、長崎市からの申し出に沿って公会堂の代替施設と言える芸術・文化ホールをつくるとは言えない」と知事は言ってきたというふうに思うんです。
 そして、さらに、事務方が整理したペーパーですが、これは当然知事も認識をしているというふうに思いますが、「県は、文化拠点としてアルカスSASEBОを整備済みであり、また、時津のカナリーホールやシーハット大村等、県下の文化ホールの充足状況を鑑みて、新たな県立ホール、県立文化ホールをつくる必要はないとの判断から、平成15年に文化施設整備基金を廃止をした。よって、音楽専用ホールの整備が現時点で必要とまでは言えない」と記されています。これは、300席であろうと、500席であろうと、1,000席であろうと同じだというふうに思うんです。
 そして、そのペーパーには、加えて、「県としては、文化施設整備の経緯から、中規模の平土間の多目的交流スペースの整備を中心に検討する」と書かれているわけであります。
 しかし、こういった経緯や整理がありながら、県と長崎市の職員の間でホール機能について何回か協議がなされております。
 そして、また、さきの本会議でこれに関連する質問に、知事は、「芸術・文化ホールは、興行採算性の観点からは1,000席に優位性がある」というふうに答えられて、いかにも1,000席の文化ホールをつくることを決定したのではないかともとられるような答弁をされました。
 加えて、昨日、企画振興部長は、「市が公会堂代替施設として提案している内容と一致しており、今後、一緒に質の高さについて詰めていきたい」というふうに答弁をしました。私としては、いつ、そのようになっていったのか、非常に不可解なわけであります。
 先ほど述べましたように、知事は、「ホール機能の重複は避ける」と言っているのに、MICE施設のホール機能について、長崎市からボールが返ってきていないんじゃありませんか。
 一方、市が、さきの長崎市議会の総務委員会で示した資料によると、交流拠点用地の活用の仕方として幾つか示しながらも、やはりMICE機能を中核としたものが一番いいんだと。そして、そのモデルプランはメインホールで3,000平米、メッセ等の展示スペースで3,000平米、会議室等で3,000平米、多目的ホールで1,500平米だと述べております。
 メインホールや展示スペースは、体育館のフロアのような平土間だと記されているわけでありますが、多目的ホールについては、中身が示されていません。
 果たして、この案が市議会の賛同を得るかどうかわかりませんが、多目的ホールというのは一体何なのかも含めて、市当局内部の考え方も固まっていないといった現状であるように見受けられます。
 逆に言えば、県庁舎の跡地問題での決着を見ていたと、そして、市長は公会堂の代替施設のめどがついたとまで言っているわけであります。
 しかし、県としての考え方の手順は、知事がこれまで答弁してきたように、逆ではありませんか。そうであれば、県としては、これまでのいろんな経緯から、ホールについては平土間の中規模の多目的交流スペースの整備を中心に検討していくということをはっきり上げるべきだというふうに思うんですが、いかがですか。

企画振興部長答弁

 ただいま、市の方と事務的に協議しておりますのは、まずは、県議会に対しまして整備方針を固めた上で協議をさせていただきたいということで、その過程の中で協議をしているところでございます。
 県庁跡地に検討しているホールについては、2月の定例県議会において、「歴史あるこの地にふさわしい文化の中心となる質の高い文化・芸術ホール」という方向性をお示しをいたしまして、特別委員会をはじめ、県議会のご意見をいただきながら検討を進めているところでございます。
 ホールの席数については、興行採算性の観点から1,000席程度に優位性があるということで、そういったホールの規模的な問題につきましては、長崎市から提案があったホールの規模感と方向性が一致するのではないかということで考えているところでございます。
 現在、整備方針という案の取りまとめに向けて、県と長崎市がそれぞれ考える主な用途、それから、それに応じた機能面などについて協議を行っているということでご理解をいただきたいというふうに思います。

 今、私の方が指摘をさせていただいたこれまでの経緯、いつもこれまでの経緯といったことを答弁をされるので、逆にこれまでの経緯といったことについてお話をさせていただいた。そこのプロセスというか、この点はしっかり踏まえて、今後の作業内容というか、進め方、あるいは、いろんな枠組みの構築といったことについては腐心をしてもらいたいというふうに思うんです。
 どうも、今までやってきたことと、いつの間にか違うようなやり方になってしまっているのではないか。その結果として、長崎市長はああいうふうな発言までしているといったことは、県としては、これは不本意だというふうに思うんですよ。ですから、その辺も含めて、県としての立場を、これまで踏襲してきた立場をそれこそ崩さずにやってもらいたいというふうに思います。
 このホールのことに限らず、県庁舎の移転によって、別館や県警本部も壊され、そして、新別館や、その他多くの民間の借り上げスペースもあいてしまうということになります。人もいなくなり、したがって、先ほど言いましたけれども、まちも動かなくなってしまう可能性もあります。
 その一方で、本館の跡地、第一別館も含まれるかもしれませんが、そこだけが多額な費用をかけて、いわば観光的な施設になると。しかし、稼働状況についての見通しは、まだ示されていません。そういうことが、県都長崎市の一番中心部のまちなか整備のあり方として進んでいっていいのかといったことについては、私は長崎市選出の議員として、なかなか納得がいくものではありません、と明確に述べさせていただく次第です。
 今日の質疑の中で、知事は、仮定の話にはなかなか答えにくい、答えられないということを前提としつつも、「市が正式に県の方に打診をしてきた時には、それはその時に考える」というような答弁がありました。それでもって、私としては了としたいというふうに思います。
 つけ加えて言うならば、県警本部跡地や、場合によっては第三別館、さらには江戸町公園の敷地の活用も視野に入れて、市の庁舎と懇話会の提言にあるものをうまく組み合わせて、他の先進地にも見られるような複合的な施設を県・市でつくり、にぎわいの場をつくっていくことが土地利用のあり方として有用だと主張させていただきまして、次の質問に移りたいというふうに思います。

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3.被爆体験者の援護対策について


(1)直近の高裁判決・地裁判決を受けての知事の所見

 まず、今年に入って、被爆体験者の訴訟が去る2月22日、長崎地裁であり、5月23日には福岡高裁でありました。
 この2つは、訴訟物は基本的に同じでありながら、それぞれ異なる判決で、したがって、理由も違います。
 長崎地裁は、証拠として提出された被曝線量に着目をして、「25ミリシーベルト以上の被曝線量を受けた者は健康被害を生ずる可能性がある」として、「原告のうちの9人を被爆者として認定すべきだ」という判決を下しました。
 これに対して、第1陣の控訴審である福岡高裁は、「放射線による健康被害が認められるのは、爆心地から7.5キロメートルまでであり、したがって、原告は全て爆心地から半径12キロメートル以内にあるものの、7.5キロメートル以遠であるから、被爆者援護法第1条第3号の被爆者には当たらない」という判決を下しました。
 私もこの福岡高裁の判決を法廷で聞き、判決文も読みました。しかし、それは法律解釈に重大な誤りがあり、評価に値しない不当な判決であると私は考えておりますが、まずは、この両判決を受けての知事の所見をお尋ねいたします。

知事答弁

 被爆者健康手帳の交付を求めた2月の被爆体験者訴訟第2陣第一審判決、そして、また、先月の第1陣控訴審判決につきましては、判断が分かれることとなったところでありますが、いずれにいたしましても、どちらの裁判も継続中でありますので、今後の司法判断をしっかりと見極めていかなければならないと考えております。
 裁判の争点となりました、この被爆者健康手帳交付の要件であります「被爆者援護法」第1条第3号に規定する「原子爆弾が投下された際又はその後において身体に原子爆弾の影響を受けるような事情のもとにあった者」について、その事実の立証責任を控訴人らに求めたということについては、高裁、地裁とも同様の判断がなされたところであり、これは裁判の厳しさとして一定受け止めざるを得ないものと考えているところであります。
 そうした一方で、被爆県の知事といたしましては、さきの判決の中で、一定科学的な根拠として、今後、確立されていく可能性もあるのではないかとの思いもございましたけれども、結果として、そうならなかったわけでありまして、一部残念な気持ちもありますけれども、今後とも被爆者援護施策の一層の充実に向けて、引き続き長崎市と連携しながら取り組んでいかなければならないと考えているところであります。

 「被爆者援護施策の充実に向けて、長崎市とともに積極的に取り組んでいかなければならないというふうに考えている」というふうなコメントがありました。
 それで、もう一度お尋ねをしますが、県は、国や長崎市とともに被爆体験者と裁判で争っているといったのは、それは事実であります。しかし、それはそれとして、被爆体験者は何も過当な要求をしているわけではないんですから、同じく原爆の辛酸をなめながら、被爆者と区別した不合理な取り扱いを改善をしてくれと言っているだけなんです。被爆から71年も経った今日でも、肉体的にも精神的にも苦しんでいる県民なわけです。
 そこで、知事は、憲法に保障された地方自治の自治体の長として、統括権、代表権を有する県民の選良であるからには、国の法定受託事務がどうかという前に、県民に寄り添って政治や行政を進めなければならないというふうに思うんですが、知事は一体、国なのか、県民である被爆体験者なのか、どっちを向いておるのか、再度お尋ねをしたいというふうに思います。

知事答弁

 それは、両方ともの立場を持っているわけでありますので、どっちか一方に決めろというのは、なかなかに難しい立場であります。

 県民の代表としての知事、政治家の知事としては、やっぱり被爆体験者に寄り添って、ぜひいろんな考え方を進めてもらいたいということを強くお願いをしたいというふうに思うんです。

(2)制度見直しについての国及び国会議員への申し入れについて

 ところで、第2陣の第一審判決後、原告団の代表は厚労省や国会議員を回りまして、現行制度の改善を訴えてきました。その中で、自民党の原爆被爆者を救済する議員連盟の総会において、本県選出の冨岡代議士は、「救済の方向で考えていかなければならない」と強く主張をされ、また、金子議員は、「長崎県や長崎市は、なぜ控訴したのか」と発言したとも聞いております。全体として救済に向かわなければならないという空気だったということです。また、厚労省も、被爆体験者に寄り添う姿勢が見られたそうであります。国は、こうした状況にあります。
 そこで、今こそ、知事は、「被爆体験者は被爆者だ」という認識に立って、制度改善について、政治決着するよう関係者に強く訴えていくべきではないか。県民から負託を受けた長崎県知事として、先頭に立って国の誤りを是正するよう行動すべきだと思うし、また、そうであってほしいと願うわけでありますが、知事の見解を再度求めます。

知事答弁

 被爆者援護施策の充実については、これまでも、あらゆる機会を捉えて要望活動等を行ってきているところであり、これからも、そういった意味では被爆者の方々の思いを共有する立場から、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 国は、新たな科学的知見を持ってこいといったことを言っているわけですね。その基本懇の整備から始まって、ずっとそのことを繰り返している。しかし、その発見は、なかなか難しい。だから、通常型の要望、陳情をするだけでは、なかなか解決につながっていかないと。そういう思いがあって、少し、今、私がお願いしたようなことについての取組が、少し腰が引けていると、率直に申し上げて。そういうふうな状況にあったというふうに思うんです。しかし、知事、その国が言う新たな科学的・医学的知見というのは、不可能なことを求めているというふうに思いませんか。
 なんとなれば、その被曝線量と健康被害の発生の因果関係は、医学的にまだ通説になったものはないんです。そもそも、個人に対して、原爆落下時に被曝線量が幾らだったとか、国が測定したといったことはないではありませんか。
 「被爆者援護法」の第1条第3号は、「原爆放射能の影響を受ける事情のもとにあった者」と規定をされているわけであって、「原爆放射能が健康被害を引き起こした高度の蓋然性を立証できるもの」といったことはどこにも規定はないのであります。
 そもそも、健康被害の有無よりも、生活環境が放射能で汚染された事実を重視すべきでありますし、また、一歩譲っても、被爆体験者には被爆者と同様の急性症状が見られたというのは、これまでの調査で明らかなわけであります。
 放射能被害は、その可能性を広く見渡し、懸念のある者を広く救済しなければ、本当に誠実な被爆者を救い漏らすことになるというふうに思うんです。そうした思いを持って、長崎市は被爆地域の拡大要求をさらに積極的に取り組んでいくといったことも報じられておりますが、歩調を合わせて、知事として、より積極的な取組をお願いをしたいというふうに思うんですが、いま一度答弁を求めます。

知事答弁

 確かに、基本懇以降、その科学的な根拠を求められると、大変厳しい状況にあるわけでありますけれども、そういった中で被爆地域の拡大を直ちに求めていけるかどうかというのは、これまた、なかなかに難しい状況であろうと考えております。
 さまざまな訴訟等の場において、被爆者健康手帳の交付拡大等について取組が進められているわけでありますけれども、そういった中で一定の基準、判断というのが示されていくのではないかと。今回も訴訟の中でそういった期待感もあったわけでありますけれども、控訴審ではそれが退けられたというところであり、今後の推移をしっかり見極めて対応していかなければいけないと思っているところであります。

 訴訟は訴訟として新たな展開が行われていますけれども、そういったことよりは基本的にやっぱり立法政策の問題だというふうに認識をしていますから、そういう意味では、政治家知事、被爆県長崎の代表の知事として、県民被爆者、被爆体験者に寄り添った、そういう取組こそがあってしかるべきだというふうに思います。ぜひその辺は力を入れてもらいたい、ここは強く要望したいというふうに思うんです。
 かつて、このことで議論をした時に、被爆体験者の制度、被爆地域の拡大要求をする中で被爆体験者の制度ができた。これは苦渋の決断だと、そういうふうな、いわばこの問題は決着をしたと言わんばかりのそういうふうな話、答弁がありました。しかし、私は、到底、決着したというふうには思っていません。なぜなら、その安易で無責任な妥協は、現実として、こうした大きな矛盾と差別を生んでいるからであります。そうであれば、やはりその改善を率直に、積極的に求めていくといったことが不可欠だというふうに思うんです。
 今言いましたように、裁判の判決も原爆落下時の長崎市の行政区域を全部被爆地域としたことは、立法政策だというふうに言っています。そうであれば、半径12キロ圏域を等しく被爆地域とすることも立法政策であって、したがって政治的にできないことではないというふうに思います。
 長崎市は、今回の福岡高裁の判決の後も、被爆地域の拡大を国に求めていくと言っています。どうか、知事においては、そういったことを認識をさらに深めていただき、積極的な国に対する制度改善を先頭に立ってやっていくというような、そういう強い決意を持って取組をしていただくことを、本当に心から念願をいたす次第であります。

(3)放射線影響研究会の検討内容等の申し入れについて

 ところで、今、長崎市が中心となって、放射能人体影響について、新たな科学的知見を見い出そうとしている放射線影響研究会が開かれています。しかし、その研究会では、低線量による外部被曝や放射能降下物による内部被曝による健康被害について、いまだ十分な検討がなされていないというふうに思います。
 そうした中で、本田医師の調査解析の資料が裁判所に提出をされたり、フランス、イギリス、アメリカの原子力施設労働者の後方視的な国際研究において、100ミリシーベルト以下の低線量被曝でも、がん死亡のリスク上昇が確認をされたということが報告をされているわけであります。これは、朝長先生の資料として提出をされている。したがって、これらを研究会での検討の俎上に上げることが必要だというふうに思いますが、その研究会に参加している県として、ここら辺について十分検討するよう申し入れるべきではないかというふうに思いますが、いかがですか。

福祉保健部長答弁

 本研究会におきます研究対象、これにつきましては原爆被爆者援護行政の課題に関係する研究の中から委員間で協議を決定されるということでございまして、その関係資料につきましては、各委員の専門分野については自ら提出をし、それ以外は交流のある他の専門家の協力を得て収集されているということで聞いております。
 議員からお話がありましたけれども、本田医師の研究に関する根拠として示されました米国のマンハッタン管区原子爆弾調査団の調査、これについてもこの研究会の研究の対象とはなっておるところでございます。現在、この研究会におきましては、低線量被曝の影響に関する研究ということで、国際的な状況も含めて、国際的な観点の調査も含めて議論がなされているところでありまして、県といたしましても、事務局、オブザーバーとして参加をしておりますので、しっかり見極めていきたいと考えております。

 よろしく、県としてかかわっていただくことを要望をいたしておきます。

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4.県立亜熱帯植物園の存廃について


(1)基本的な考え方。

 野母崎にある亜熱帯植物園は、昭和38年の設立以来、半世紀にわたって貴重植物の鑑賞や教育・学習・体験の場、また、県民の憩いの場として利用され、野母崎地域のシンボルとして親しまれてきた施設であります。
 この間、施設整備として50億円以上を投資し、現在、ピーク時より少なくなったとはいえ、年間3万人を超える入園者もいるわけであります。しかしながら、この亜熱帯植物園が地すべり地帯にあり、平成25年度から実施した地すべり調査や専門家の検証により、当面の地すべり対策工事として、最低でも31億円の経費が必要であり、抜本的に対策を講じるには、さらに多額の費用を要するということが明らかになったわけであります。また、この間にも植物園一帯の地すべりは進行しており、既に入園者の立ち入り範囲にもその影響が生じているという状況にあります。
 こうした中で、「将来にわたる入園者の安全確保が難しい現状や植物園を取り巻く環境等の変化を踏まえると、まことに苦渋の選択ではあるが、一般入場者に対する営業を停止せざるを得ない」と、本定例会の冒頭、知事は述べられました。
 しかし、地元では、安全対策に金はかかるだろうが、それでも亜熱帯植物園は存続してほしいという強い要望がありますことから、いま一度知事の所見をお伺いいたします。

知事答弁

 亜熱帯植物園につきましては、昭和44年の開設以来、植物の鑑賞、また、観光レクリエーション施設として、多くの県民の皆様方、あるいは観光客の皆様方に親しまれて、平成10年のリニューアルオープン時には年間12万人の方々にご来場いただくなど、野母崎地域の観光シンボルとして大切な役割を果たしてきたところであります。
 しかしながら、平成18年に地すべりが発生いたしまして以来、安全性の確保というのが極めて大きな課題となっておりまして、ご指摘のとおり、現在も植物園一帯の地すべりが進行しているところであり、既に来園者の立ち入る範囲にもその影響が生じているところであります。
 これまで、野母崎地域のシンボルとして、あるいはシンボルとして住民の方々に長年にわたって親しまれてきた施設であるということは十分に認識をいたしておりますけれども、やはり入園者の安全確保というのを最優先に考えなければいけないという状況にあるわけでありまして、必要とされる対策を講じていくというには、巨額の財源が伴ってくるわけでありまして、今の状況では極めて難しいと判断をいたしているところであります。また、この植物園の役割自体も、開園当初と比べますと、取り巻く環境が大きく変化しつつあるというのも、また事実であります。
 そういう状況から、私といたしましては、本当に苦渋の思いでありましたけれども、現在の指定管理が終了する平成29年3月末を一定の目途として営業を停止せざるを得ないと考え、先般、その旨を表明させていただいたところであります。
 なお、今後は、地域の活性化に向けた長崎市と地元との協議の場に参画してまいりますとともに、閉園後の防災対策等について、検討を進めていかなければならないと考えているところであります。

  私も地元の議員として、まことに断腸の思いでありますけれども、今の知事の考えについては受け入れざるを得ないというふうに思っています。
 ただ、来年度1年間だけは、これは全ての入園者を全てクローズをするというのではなくて、例えば、地すべり地区と一定離れたところにある野外ステージの広場とか、あるいは体験栽培温室とか、入り口の売店とか、そういったものについて、例えば天気のいい土日等に限って、安全を確保しながら、憩いの場として利用を認めるといったようなことについても、要するに廃園についてのソフトランディングについても十分に配慮をして、検討していただきたいというふうに思いますし、それから、廃園をしてそれで終わりという話になると、これは野母崎の地域振興にとって大変打撃が大きいというふうになってきます。
 今、知事も言われましたけれども、今、地元の方ではいろんな地域振興策を講じようといったことで真剣な協議がなされておりますので、ついては、県としても、これまで植物園が果たしてきた役割を踏まえて、にぎわいの創出、あるいは地域の活性化に向けて市の取組を後押しをするとともに、自らも知恵を出して協議に参画することを通じて、成果物には積極的な財政支援をする取組を行っていただくことを強く要望をする次第であります。
 時間になりました。石木ダムの問題については、次回に譲りたいというふうに思います。
 ありがとうございました。


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