2022年春までの開業を目指す九州新幹線長崎ルートに導入予定のフリーゲージトレイン(FGT)の開発が大幅に遅れ、開業時の本格導入が困難となった問題で、12月10日に県議会総務委員会で集中審議を行いました。
FGTについては、これまで走行試験が繰り返し行われてきましたが、その際、車軸と滑り軸受の接触部に微細摩耗痕が見られるとともに、スラスト軸受けのオイルシールの芯金に疲労亀裂が発生・進展し、部分的欠損が発生したことが国土交通省から公表されました。
今後、必要な改良を行い、早ければ来年度後半から走行試験を再開したいとのことですが、開発の大幅遅れにより22年の量産車導入は困難との見通しも併せて述べられました。
県や沿線自治体とも22年の開業を可能な限り前倒しするとした、政府与党の先の合意の順守をあくまでも求めていくとしていますが、量産車導入は間に合わないという現実においては、どういった開業方式にするかを詰めていかなければなりません。
その際の選択肢は、
@ 量産前に1,2編成製造する先行車によって運行する方式
A 新幹線と特急を乗り継ぐリレー方式
B @またはAを当面の暫定措置として全線フル規格化を目指す方式
のいずれかで開業を目指すということです。
国交省の需要予測ではFGTは8両編成、長崎・博多間で1日計31本を運行し、うち14本が山陽新幹線に乗り入れると想定。長崎・博多間の所要時間は最速で1時間20分。したがって、先行車で長崎と博多をそれぞれ同時に出発しても、運行は2時間に1本程度で需要は賄えないばかりか、新幹線の開業効果が発現しないことが危惧されます。
次にリレー方式の場合、武雄温泉と新鳥栖で2度乗り換え、あげく現行特急より10分程度の短縮しかできないことになり、乗り換えの待ち時間や手間が生じ、新幹線効果は薄くなることは明白です。
これらに対し、長崎・博多全区間を新幹線の車両幅で整備するフル規格の利点は、安全性に対する安定感と、時間短縮効果も最大のものになります。長崎・博多間は現行の約2時間から50分に短縮されます。
しかしこの全線フル規格化にするためには、現在の整備区間に加えて新たに新鳥栖・武雄温泉間の約51キロを整備する必要があり、そのための建設費約4000億〜5000億の財源を捻出する必要があります。
とりわけ、その際の佐賀県の負担金700億〜800億の調達が最大の問題になることが予想されます。
いずれも一長一短がある中で、国は今後長崎、佐賀両県と協議して開業方式をどうするか詰めていきたいとしています。
私は、開業時期は22年春を可能な限り前倒しするとした政府与党の合意の順守は譲れないものの、FGTの安全性の確保のための技術確立と量産車の整備が早期に見出せない場合は、引き続き全線フル規格化を目指すための財源問題を中心とする新たな新幹線スキームを作ることを強く訴えていきたいと思います。そうでなければ九州新幹線長崎ルートの建設意義はありません。
この問題に関する皆さんのご意見をお寄せください。
なお、本件についての長崎新聞の記事(平成27年12月11日)については
こちらからご覧ください(PDF 1,148KB)。