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たかひら元の県政リポートをご報告します。

被爆地域の拡大を国に要望すべしという意見書の採択を提案するも否決される (平成27年11月掲載)
 現在の被爆者援護対策は、原爆落下当時の地図上に描かれた長崎市の行政区域内のみを対象として出発しています。
 その後、対象地(被爆地域)は一定拡大されましたが、それでも被爆地域は原爆落下中心地を挟み、南北は12km強、東西は5km強のエリアに限定されており、大変いびつな区域設定になっています。  何故いびつかというと、原爆による放射線や熱線や爆風は落下中心地から同心円的に広がっていき、したがって原爆被害の強弱は中心地からの距離に比例するにもかかわらず、非科学的な単に行政区域という人為的な設定のみをもって地域指定がなされているからです。

 この非科学的なやり方での不公平な取り扱いを是正するようこれまでも国に求めてきましたが、未だ改善されていません。
 そのため、県としてもより積極的に制度改善を国に求めていくべきとの県議会の意見書を提出するよう本会議に提案しましたが、数において優る党派議員の反対によって誠に残念なことに否決されてしまいました。

 被爆県長崎として、何故、被爆者救済に立ち上がらないのか不思議でなりません。
 以下に、意見書案と賛成討論の原稿を掲載しますので、これらをお読みいただき、是非皆様のお考えをお聞かせください。


動  議


 原爆被爆地域の拡大を国に要望することを求める意見書案を別紙のとおり提出する。

平成27年9月15日

    議 員  小林 克敏    議 員  吉村 庄二

    議 員  中山  功    議 員  渡辺 敏勝

    議 員  山田 博司    議 員  久野  哲

    議 員  比良 元    議 員  堀江ひとみ

    議 員  山田 朋子    議 員  深堀  浩

    議 員  大久保潔重    議 員  坂本  浩

    議 員  吉村 正寿


長崎県議会議長  田中 愛国 様



別紙

原爆被爆地域の拡大を国に要望することを求める意見書(案)


 爆心地から南北に半径約12キロ、東西約5〜7キロの圏内が指定されている長崎の被爆地域について、長崎市長は同市議会議長及び原子爆弾被爆者援護強化対策協議会会長らとともに、去る7月9日、厚生労働省を訪れ、半径12キロ圏への拡大を要望した。  また併せて、自民党の原子爆弾被爆者救済を進める議員連盟や民主党の被爆者問題議員懇談会、公明党の原爆被害者対策委員会等、被爆者問題に取り組む与野党の議員連盟などにも同様に要望した。

 国に対する長崎市の拡大要望は、爆心地から半径12キロ圏内で原爆に遭いながら被爆者と認められていないいわゆる被爆体験者の高齢化を受け、被爆70年を機に救済の観点から実現を求めたものである。

 そもそも被爆地域は原爆による放射線、熱線、爆風が爆心地から同JL円的に広がり、したがって、原爆による被爆者も基本的に爆心地からの距離に応じて疾病の度合いが違うにもかかわらず、当時の行政区域という人為的に地図上に引かれたエリアをもって指定するという非科学的で不合理な立法政策によって決定されたことに大きな誤りがあることは自明の理である。したがって県もこれまで第一次・第二次の地域拡大及び半径12キロ圏までの地域拡大を国に対し要望活動を行ってきたところである。

 しかしながら、半径12キロ圏までの地域拡大の要望の際、国の原爆被爆者対策基本問題懇談会の答申に基づいた地域拡大に対する抵抗にあい、いわゆる被爆体験者事業の創設見合いをもって、地域拡大を断念した経緯がある。
 また、被爆者として認定するためには原爆による放射線被爆と疾病発生との因果関係を医学的・疫学的に立証する新たな科学的知見を示せとの国の指摘の前に、これまで県・長崎市ともに被爆地域拡大に対する取り組みが消極的なままに終わっていた。

 しかし、昨年、長崎市は新たな科学的知見の立証に向けた放射線影響研究会を発足するとともに、今般、上述のような要望活動を再開した。
 そもそも、同じ半径12キロ圏内で被爆した者が被爆者といわゆる被爆体験者に区分される不合理性や被爆者と被爆体験者双方に対する被爆後の健康被害調査結果が類似しているにもかかわらず、一方には被爆と健康被害に対する科学的証明を問わず、他方には当該証明を求めるという不均等な取り扱い等、現行の制度は大きな矛盾を内包していることは明らかである。

 よって、県としてもこの際、被爆県という立場から、国に対し強く被爆地域拡大の要望を行うよう求めるものである。

 以上、意見書を提出する。


 平成27年10月  日

賛成討論の原稿


県民主役の会、高比良 元です。
意見書案の提出者として満感の思いを持って賛成討論を行います。

 先ず、意見書案で述べているとおり、爆心地から半径12km圏内で原子爆弾の被害にあった者が、被爆者といわゆる披爆体験者に区分されていることの不合理性や、被爆者と被爆体験者の双方に対する被爆後の健康被害の調査結果が類以しているにもかかわらず、一方には被爆と健康被害についての科学的証明を問わず、他方には放射能に起因する疾病であることの医学的・科学的な挙証責任を求めるという余りに理不尽で不均等な取り扱いが行われているなど、現行の国の被爆者援護制度は大きな矛盾を内包していることは明らかであります。

 こうした理不尽で不均等な現実に甘んじている原因のひとつは、かつて平成12年に行った半径12km圏内までの被爆地域の拡大要望活動において国のハードルが高い中で、いわば妥協案として被爆体験者支援事業が国から示され、その提案を受け入れ、関係地区の住民代表や県・市町等からなる被爆地域拡大是正要請行動実行委員会において了承してしまったことにあります。

 官民一体となった活発な要望活動が行われたことは多とするところでありますが、しかしながらこの妥協案を受け入れたことは、原爆の炸裂による放射線や熱線や爆風は爆心地から同心円的に広がっていき、したがって、被爆による健康被害は基本的に爆心地からの距離に比例するといった被爆の実相を捨象し、被爆者援護対策の哲学を忘れた事務的・政治的なまさに妥協の産物であり、多くの被爆体験者が高齢化も手伝う中で健康被害を訴え、また、精神的にも苦しむ現状においてかつての判断を到底、容認することはできないのであります。

 また、その要望活動を行うに際し、県議会においても要望実現の暁には、更なる地域拡大の要望はしない旨の意見書を決議しておりますが、これは、爆心地から半径12kmまでの被爆地域の拡大が認められれば、即ち、半径12km圏内で被爆した人たちが被爆者と認められれば、それ以上の拡大要求はしないと述べたものであり、このことが実現していない、成就していない今日においては議会としても国に対し更なる活動を展開すべきであります。

 国は、原爆被爆者対策基本問題懇談会の答申を盾として、被爆者として認定するためには被爆線量と健康被害や疾病の発生の因果関係を科学的・疫学的・医学的に個別に立証すべきだとの無理難題を被爆者に課し、県もそうした国の主張に重きを置くが如く、新たな科学的知見が見い出せない以上、ことさら地域拡大を要望しても実現可能性が薄いといったような消極的な姿勢に甘んじているように見受けるわけでありますが、それは基本的な被爆者援護対策の充実を求め、今なお苦しむ県民の願いに応えることを永久に放棄するものだと言わざるを待ません。

 何故ならば、原爆落下後、半径12km圏内の個々の被爆者に対する被爆線量についての調査はそもそも行われていないのであり、したがって国の主張は現実的に不可能なことをことさらもっともらしく主張しているからであります。
その一方で、現在の被爆地域の指定はいわば立法政策としてつくられているのであります。

 こうしたことに真摯に向き合い、立法政策として半径12km圏内を被爆地域として指定させる政治力を結集する取り組みを行いつつ、国に対して現行制度の改善を強く迫っていかなければなりません。
 そのことが人類の歴史上最も悲惨な経験をしたと言っても過言ではない長崎県民の願いに応える途であります。

 先般、長崎市の市長は国の姿勢を認識しつつも、半径12kmまでの被爆地域の拡大を国に強く要望したことはご案内のとおりであります。
また長崎市議会も全会一致でこれを指示しました。
 その際、各政党を問わず、被爆者援護対策に関心の深い議員連盟等の国会議員の皆さんは、長崎県と長崎市が共同歩調をもって要望すれば、我々としても最大限の努力をするといった趣旨の発言をされておられます。
 国会議員の皆さんは、まさに本県が腰を上げるのを待っておられるのであります。

 今一度いいます。
この間題に関心のある国会議員の皆さんは政党を問わず現行制度の改正が必要だと認識しているのであります。
 何故、その力を活かそうとしないのか、要望すること自体をはばかるのは何と言おうと県民に軸足を置く県政として説明がつくものではありません。
 いまこそ被爆県長崎として国に対して半径12km圏内の被爆地域の拡大を求めていくぺきことを強く主張し、議員各位の賢明な判断を願う次第であります。

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