議会運営委員会委員長の不信任案決議に対し賛成する立場で私が次のように討論しました。
議会運営委員会委員長不信任決議(案) (PDF)
議会運営委員会委員長の不信任案決議に対し賛成する立場から討論を行います。
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先ず、第一に、先の予算決算委員会が委員長の招集にもかかわらず、定足数を充たさず流会とせざるを得なかった原因は何かということであります。
それは一重に委員長の再々の出席要請にもかかわらず、自民党会派・公明党会派の議員が出席しなかったからに他なりません。
欠席の理由が何であれ、委員長が正式な手続きのもとに招集していることに対し、まさに自己都合により委員会審査の義務を懈怠したのであります。
その紛れもない原因となる事実を棚上げして、委員長が調整を図ることなく理事会を継続し、委員会の閉会を一方的に宣言したとか、委員長が委員会の正常化に向けて指導力を発揮しなかったからだと主張することは、背景となる事実であったとしても主たる事実とはなりえないのであります。
“自らの正当性を主張するには自らが正当な行為者でなければならない”という法律の適用に関するクリーンハンズの大原則(※1)をだれしもが遵守しなければならないことを、良識ある議員であれば当然に想起すべきであります。
また、多数の意見を尊重しなかったからという主張や、加えて予算決算委員会委員長の不信任決議を可決したのにこれに従わないのは民主主義に反するという独善的な主張は、明確な合理的根拠もなく、まさに数による横暴としか言いようがありません。
なんとなれば、予算決算委員会の会議規則では総括質疑をすることを本則として明記しており、加えて補正予算のみならず当初予算についてもその対象とすると規定しているであります。
予算決算委員会委員長の賢明な判断において論理的にどこに問題があったと言うのでありましょうか。
いずれにせよ予算決算委員会は、なさなかったのではなく、数の暴挙によってできなくされてしまったのであります。
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第二に、自民党会派・公明党会派の議員諸兄は自らできなくさせてしまった予算決算委員会の審査に代わる手法として、長崎県県議会会議規則第31条の「審査の懈怠」の条項を持ち出し、本会議で審議することを提案してきました。
これは、当該条項の適用の可否は単に議会の多数の意思で決めればいいという、法的な論拠もないままの誠に短絡的で身勝手な解釈であります。
民事訴訟法に「期間の懈怠」に関する条文があり、その有権解釈(※2)は“当事者がその責に帰すべき事由により一定の期間に定められた行為をしなかったこと、即ち、故意・過失を問わず不作為により権利放棄をしたこと”だとされているのであります。
換言すれば、法的安定性を保つために権利のうえに限っている怠慢に対するペナルティーを指しているのであります。
民事訴訟法であれ、県議会会議規則であれ、これが法律の合目的解釈として統一されなければなりません。
しかるに、先に述べたように予算決算委員会の委員長は委員会を招集し、審査をするよう舞台を整えたにもかかわらず、自民党会派と公明党会派の議員は出席を拒否し、委員会審査をできなくしてしまったのであります。
権利のうえに限り、なすべきことをなさなかったことと、なそうとしてもできなくされてしまったことが明らかに違うことは、誰の目にも明らかではありませんか。
加えて、昨日の議会運営委員会の議論において、「審査の懈怠」に関する法的解釈如何という我々からの質問に対し、自民党会派・公明党会派の委員は、同じく先に述べた予算決算委員会の委員長が事前に調整をしなかったこと、不信任決議の可決に基づいて辞任しなかったことを繰り返すのみでした。
それは自ら欠席したことの自己弁護の理由であるとしても、「審査の懈怠」に関する法的解釈には全くなりえないのであり、そこに、一定合理性ある法的解釈は全く示されていないのであります。
更には、法的解釈の正否・優劣は決して数の力で決まるのではないことを銘記すべきであります。
このように「審査の懈怠」条項の適用の可否について議論が収れんされていない中にあって、議会運営委員会委員長の中島廣子議員は強行採決をし、可否同数の中で、自らの判断によって本日の本会議において予算審議を行うことを決定しました。
法律的に妥当かどうかも吟味せず、今後手続き的に瑕疵があるとして審議無効の主張が正当に行われた場合に予想される議会運営の大混乱をかえりみず、無責任なままに一方的な判断を下したのであります。
今後私たちは「審査の懈怠」に関する権威ある法的見解を求めていきますが、その際、私たちと同じ趣旨の見解が示された場合に、今日の議会運営の汚名と、その後の混乱は拭い去ることができないのであります。
しかるにこのような蛮行を強引に行い、誇りある県議会の信用を大きく失墜せしめ議会運営委員会委員長は、もはや委員長としての任に値しないと断ぜざるを得ないのであります。
以上、議会運営委員会委員長の不信任決議の賛成討論といたします。議員各位の、県民の皆様が納得のいく、責任ある判断を求めるものであります。
※1 クリーンハンズの大原則とは:民法等に規定された信義誠実の原則から派生した原則の一つで、自ら法を尊重するものだけが、法の救済を受けるという原則で、自ら不法に関与した者には裁判所の救済を与えないという意味である。
※2 有権解釈とは:権限のある機関によって行われる法の解釈。拘束力をもつ。公権的解釈。