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裁判所は機械的な処理をするのみか (平成24年8月掲載)

 被爆体験者の皆さん約400人が4年半越しで、被爆手帳交付申請却下処分の取り消しを求める裁判、いわゆる「被爆体験者は被爆者だ」ということを、国に認めさせる裁判で敗訴しました。

 長崎地方裁判所の判断は、原告の訴えをことごとく却下・棄却する、何とも無情なものでした。
 爆心地から半径12km圏内で被爆し、被爆者と全く同様の境遇にある人たちの訴えだけに、裁判を支援する私たちはもとより、大方のメディアも原告勝訴の判決を期待していただけに、この冷酷無比で非人間的な判決に怒り心頭な人も多いと思います。

 裁判所の判決理由の骨子は、被爆者と認めるためには「原爆の放射能により健康被害を生じる可能性を有していたことについて、明確な蓋然性をもって疎明する必要がある」という判断基準を示したうえで、原告の立証はいずれも明確な蓋然性を認めないというものです。

 また、被爆地域が当時の長崎市という行政区域でくくられたことは、立法政策費の問題であり、国民はこの不合理を是正する権利を有しないとして、不平等であるという事実には目を向けませんでした。

 何と上から目線の判決でしょうか。
 原告である一般市民に健康被害を生じる可能性を有していたことについて、科学的な知見による挙証責任を負わせたわけですが、被爆直後の放射能のデータの詳細や放射線被曝と健康被害との明確な医学的データがないなかで、現実的に不可能なことを、あえて一般市民に求めているのです。

 既にそうしたデータがないからこそ、被爆者と被爆体験者の人たちの疾病内容や発生率等から演えき的に類推していくことが、唯一の立証方法であるべきです。
 良く分からないから認められないというのは、無責任であり、機械的にデータとデータを突き合わせて判断するだけなら裁判官ならずとも誰でもできると言わざるを得ません。

 今回の長崎地裁の判決は全く無責任で、お粗末な内容だとのそしりを免れることは出来ません。
 原告が判決の日、直ちに控訴を決めたのは至極当然です。

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