父、髙比良八郎は、８月１４日午前９時４５分、８４年の生涯を全うし永眠いたしました。
５年程前、前立腺ガンによる骨転移により、そう長くはないという医師の所見でありましたが、まさに、気力、精神力で命を永らえながらの大往生でありました。
本人は最後まで意識鮮明で、もっと生きたい、もっとやるべきことがある、その思いの中で無念の最期であったと思いますが”生あるもの、いつかは命が尽きるのが運命”天の導きにより他界いたしました。
亡き父のいよいよの時に私が心を打たれましたことは、先ずは、死の直前にあっても泣き言を言わず、頭悩明晰で、平常心のままに息を引きとったことであり、そして、自分の死を覚悟し、死と面と向かいながらも送り状として家族に数々のことを綿密に書き記していたことであり、さらには、厳格で頑固一徹、自分を強くもった、生き方をしてきただけに、反面、苦労をかけた母はもとより、時には叱りつけた私ども子や孫にも自分を律しねぎらいの言葉や感謝の言葉をかけながら往生したことであります。
自分の親なればのひいき目でもありましょうが、覚悟を持って、そして自分に責任を持って人生を歩んできた父の生き様の一端を垣間見る思いでありました。
成績抜群で将来の陸軍の指導者となることを嘱望されていた若き日の父、終戦後、一転在野にあって自分の運命に不満を言うこともなく家族のために頑張って来た父、一線を退いた後も探究心旺盛なままに博識を広げ、こつこつと自分を磨いていった父。 死してなお、家族全員が命尽きるまで、強烈に印象に残るであろう父であります。
私自身、意見の食い違いでよく衝突もした父でありますが、いま率直に万感の思いを込めて”父さんこれまでありがとう”の一語を持って永遠の別れをするものであります。
父の葬儀にご参列をいただき、また弔意を賜りました皆様はもとより、数えきれぬ多くの皆様からの故髙比良八郎に対します温かいご指導ご鞭撻、ご厚情に、故人になり変わりまして哀心より厚く厚くお礼と感謝を申し上げます。
これから私ども家族は父の供養とともに、人生のかけがえのない伴侶を失くし年取った母を守っていかなければなりません。
しかしながら、いたらぬ子供たちであります。
どうか父に対しますこれまでのご厚情に増して、皆様方のご指導、ご鞭撻を私どもに賜りますよう、よろしくお願いを申し上げる次第であります。
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