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百条委員会の中間報告について

 大学等発ベンチャー創出事業に関する調査特別委員会の活動状況について、ご報告いたします。
本委員会は、昨年11月定例会において、地方自治法第百条の規定に基づく権限を委任された委員会として設置されました。
 本委員会に付議された調査事項は、「大学等発ベンチャー創出事業における長崎県及び長崎県産業振興財団からバイオラボ社への6,000万円の出資金及び4,000万円の補助金の交付に関する事業執行内容」並びに「その他バイオラボ社の経営破綻に陥るに至るまでの長崎県行政関係当局及び長崎県産業振興財団の関与について」です。

 本委員会は、県及び産業振興財団が1億円もの出資・補助を行なったものの、事業採択からわずか4年で経営破綻したバイオラボ社に関して、その事業採択から経営破綻に陥るに至るまでの実態を明らかにすることにより、今後、このような問題が起こらないようにするにはどうすればいいのか、さらには、今後のベンチャー支援のあり方はどうあるべきか等についての調査を行なうものです。
 これらの調査を効果的に行なうために、本委員会は、地方自治法第百条の規定に基づき、証人の出頭や記録の提出について強制力を持って求めることができるという、非常に強い権限が付与されています。

 この問題につきましては、昨年の経済労働委員会においても、関係者を参考人として招致するなどして、審議を行なってまいりましたが、参考人の間で答弁内容の食い違いがあったため、虚偽の証言をした場合には罰則の適用がある、「百条委員会」による調査の必要性が求められ、全会一致で、設置されることになったものであります。

 本年1月17日に第一回目の委員会を開催して以来、これまでに、18回の委員会を開催し、調査事項について、集中して審議してまいりましたが、調査終了までには至っておりませんので、これまでの審議の状況について、中間報告をさせていただくものです。

 これまで、本委員会においては、
  ・大学等発ベンチャー創出事業の内容及び採択決定手続等の検証
  ・バイオラボ社が経営破綻に陥った主要因の検証
  ・バイオラボ社の経営に対する長崎県行政当局及び長崎県産業振興団の役割と責任の検証
 などを中心に、活発な論議を重ねてまいりました。

 この間、バイオラボ社代表取締役久木野憲司氏など9人に対する証人尋問 及び 産業振興財団の事業執行責任者など15人に対する参考人質疑 並びに 県当局の関係幹部職員に対する質疑を行なうとともに、必要な記録についての提出を求め、本問題に関する調査を鋭意行なってまいりました。

 以下、委員会で論議のありました主な事項についてご報告いたします。

 まず、「大学等発ベンチャー創出事業の内容の検討及び採択決定手続等の検証」に関し、「誰がこの事業を発案したのか。当時1億円の事業というのは九州の中でもずば抜けており、リスクを考えた上での事業であったのか。」との質問に対し、県からは、「ベンチャー支援について、新たな産業を興し、県内の雇用確保につながるものを、常々、検討していた。1億円以内という金額は、当時あった国の研究開発事業『地域新生コンソーシアム研究開発事業』の規模が1億円とされていたこと、及び、投資事業有限責任組合を地方銀行と一緒に立ち上げたときも、県が1億円支出したこと、などを参考とした。また、当時は国を挙げてベンチャー支援を行うという時代でもあり、他県にはないインパクトのある制度をつくり、いい案件が集まるようにしたかった。」との答弁がありました。

 次に、「バイオラボ社の採択を決定したプロセスはどうなってたのか。」という質問に対し、財団からは、「平成16年7月26日の外部の有識者による審査会で、支援対象案件としてバイオラボ社が選定されたので、翌日、県当局を通じて、理事長である知事に審査会の結果を報告した。その後、審査会の際に委員から出された意見や財団のインキュベーションマネージャーの見解等を参考にしながら、財団の担当部局である新事業推進部で協議のうえ、採択を決定し、8月2日に理事長である知事に報告した。リスク対応については、オブザーバーとして財団職員が取締役会に出席すること等を投資契約書に反映させたこと、また、一度に全額を投資するのではなく、事業の進捗を見ながら数回に分けて投資を行なうこととしたことである。」との答弁がありました。

 また、「審査会が支援対象案件としたものを、財団がそのまま採択の決定をすることになるのか。」
との質問に対し、財団からは、「採択の決定権は財団にあるが、審査会で通った案件を否定するには大変な努力がいる。否定する理由を明確にしなければいけない。」との答弁がありました。

 さらに、「審査会で指摘されたことが、まさに倒産の要因となっている。この指摘に対して、県と財団は十分議論して採択を決定したのか。」との質問に対して、財団からは、「審査会の意見を尊重し、総合的に判断したが、リスク等に対する指摘については、議論を尽くしたとまでは言えないかもしれない。」との答弁がありました。

 次に、「バイオラボ社が経営破綻に陥った主要因の検証」に関しては、「経営破綻に陥った最大の理由は何か。」との質問に対し、久木野社長からは、「さまざまなお金を集めて、それに対して期待もしてもらった中で、理由はどうあれ、破綻したことに関しては大変申しわけないという気持ちはずっと持っており、責任は重々感じている。破綻に至る理由については、資金調達に失敗したこと、中国研究所の設立が予定どおりいかなかったこと、それは人材的な面も含めて、そこにかなりの問題があったのではないかと総括している。」との答弁がありましたが、バイオラボ社の他の取締役からは、「資金もない中、平成18年3月に長崎本社の購入を決めたことなど、久木野社長の会社責任者としての進め方が間違っていた。」との答弁がありました。

 また、「長崎本社建物の改装工事業者の決定など、すべて取締役会で議論して決定されたのか。」との質問に対し、久木野社長からは、「重要な案件はすべて取締役会に諮っている。」との答弁があったものの、他の取締役からは、「複数の業者から改装の見積りをとったこと、また、値引きの結果、施行業者が決定されたことなどは知らない。社長から、この業者ではどうかとの話があったくらいである。」との答弁がありました。

さらに、「長崎本社及び中国研究所への過大な投資について、その必要があったのか。」との質問に対し、久木野社長からは、「この事業は事業開始までに各種、各国の基準を満たす必要最低限の施設整備を行なう必要があり、そのための建設資金と運転資金を先行投資しなければならない。したがって、プレハブや事務所のような施設で、その仕事ができるわけではなく、かなり先行して資金を投じる必要があり、資金面ではかなり、大変苦しい時期を過さなければいけない。また、苦しい時期を頑張って乗り切るしかないというふうに考えて事業を行なってきたものであり、そこを乗り切ることが事業の成功のための最も重要で高いハードルであるということは、経営陣としても共通して認識していた。」との答弁がありましたが、他の取締役からは「取締役会が機能していなかった。」との答弁があるなど、久木野社長と他の取締役との間における経営上の認識の差異が顕著に見受けられました。

 次に、「バイオラボ社の経営に対する長崎県行政当局及び長崎県産業振興財団の役割と責任の検証」に関しては、「最終的に経営者の問題であるとしても、なぜバイオラボ社の経営破綻をとめられなかったのか、財団にどういう責任があったのか。」との質問に対し、財団からは、「長崎本社を購入した平成18年3月頃から投資資金額が増加していることは把握していた。長崎本社の購入に関しては、財団は反対したが、資金調達もでき、プロのベンチャーキャピタルも賛成したため、財団はそれ以上の反対はできなかった。また、投資契約違反を理由に、投資を引き上げることによって、この企業をつぶしていいのかとという判断が難しかった。」との答弁がありました。

 また、県の責任に関しては、「県と財団で情報を共有するための対応を、もう少しきめ細かく、積極的に行うべきではなかったかと強く反省している」との答弁がありました。

次に、県広報誌「長崎夢百景」による掲載に関して、「どのような経緯で『長崎夢百景』に掲載されることとなったのか。この掲載がバイオラボ社への投資の呼び水になったと思われるが、広報発信の影響力を考慮すると、県としても責任があるのではないか。さらに、同社側からの何らかの働きかけがあったのではないか。」との質問に対し、「特集記事で『研究システムの改革による科学技術の振興』をテーマで県の産業育成の一環として『ベンチャー企業の創出支援』を紹介することとしていたが、バイオラボ社を取り上げたのは、大学等発ベンチャー創出事業が全国でも際立った施策だったからであり、関係部局との協議の上決定したものである。
また、これが投資勧誘に利用されるとは思っていなかったが、そのように使用されることに対するリスクマネジメント上の注意は必要であった。
なお、掲載について外部からの働きかけはなく、課内協議の上、企画したものである。」との答弁がありました。

 これに関連し、「平成18年3月の長崎本社購入の頃からバイオラボ社と財団はうまくいってないようにも見受けられるが、そのような状況であったのであれば、掲載について、もう少し慎重な判断が必要ではなかったのか」との質問に対し、「当時、同社が危機的状況にあるとは判断しておらず、取締役会、株主総会、社長本人からの説明により情報収集していたが、社長本人の説明を信用していた。中国研究所の稼動時期など現地確認するようなことも必要であったと反省すべき点はある。」との答弁がありました。

 以上のほか、
  ・事業応募条項と中国子会社設立との関係について
  ・不採択企業への支援の妥当性について
  ・補助金交付条件等の遵守について
  ・長崎本社購入にかかる経緯について
  ・中国での事業展開のリスクについて
  ・バイオラボ社の資金借入にかかる経緯について
 など、種々活発な論議が交わされましたが、その詳細については、この際、省略いたします。

 以上のように、証人尋問、参考人及び理事者に対する質疑等を通じて、大学等発ベンチャー創出事業における、県当局及び産業振興財団の採択及び採択後の監視体制のあり方等の問題点は明らかになってまいりましたが、バイオラボ社の経営に関しては、久木野社長と他の取締役等の間で証言内容に大きな食い違いがあり、経営破綻の真相究明に向けてさらなる調査が必要です。

 なお、今年4月の新聞の読者投稿欄によれば、「武士ならぬ教授の商法。破綻した新薬開発の際の動物実験を受託する事業のバイオラボ。長崎県が1億円、長崎市が8,600万円を支出したが、県の第三者委員会、県、市議会の百条委員会で同社の実態解明が進められている。長崎市内に土地、建物を求め、中国に研究所を設けるなど巨額の金が注ぎ込まれたが、事業の本格的始動がないまま9億5,000万円の負債を抱え倒産した。ずさんな計画による過剰投資、役員報酬、交通費など経費節減意識の欠如、取締役会、監査役などチェック機能の無視などおよそ企業経営として体をなしておらず、破綻は当然といわざるを得ない。県、市は公金を支出したが戻ってこない。公金を出しながら十分な監視が果たされなかったため、むざむざどぶに捨てる結果となった。それに対する県、市の責任の取り方はいまだに明らかにされていない。特に社長の務めるのは県立大の教授である。会社運営を優先させ大学に無届けで中国出張し、休講を重ねるなど責任は大きいが、教授の席に居座り、けりがつけられていない。地位が安泰であるのか?県、市として納得のいく説明がほしい。」との県民の声が寄せられておりますが、私たち議員にはこの声に応える責務があります。

 また、久木野社長は、証人尋問後の記者会見において、本委員会が不当な運営を行っているかのような批判的な発言をされておりますが、去る17日の記者会見においても厳重に抗議いたしましたとおり、本委員会は、この問題の真相究明に向けて、極めて適正に運営いたしておりますことを、あらためて、申し上げます。

 本委員会としては、今後、県における今後のベンチャー支援のあり方等も含めて、さらに論議を重ね、最終の調査報告を行いたいと考えております。

 皆様方のご意見をお聞かせください。

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