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長崎市民病院と日赤長崎原爆病院の統合問題

 公立病院改革プラン策定協議会からの提言を踏まえる形で、知事が長崎市長に長崎市民病院の建替えに際し、日赤長崎原爆病院と再編統合し市立成人病センターを含む3病院に代わる高機能病院を建設すべきだと申し入れた件について、12月定例県議会厚生環境委員会で集中した議論が行われ、その際、私が提起した事項等について紹介し、これについて皆様方からのご意見を賜れば幸いです。

【長崎市案と県案との比較】

項   目 長 崎 市 案 県    案
延べ床面積 約31,500u(70u/床) 約48,000u(80u/床)
建設費 152億円 185億円
医療機器・システム 48億円 65億円
運営方式 公設公営 公設民営(日赤へ運営委託)
病床数 450 600
高度医療機能 ・救命救急センターに準ずる機能 ・がん、脳血管、心疾患、
 糖尿病中心の高度医療
・脳血管障害、冠動脈障害、がん医療 ・救命救急センター
・周産期医療 ・小児医療、周産期医療
・政策医療(災害、結核、感染症) ・被爆者医療、災害医療
・教育、研修機能
スタッフ体制 総数551以上(1.22人以上/床) 総数756以上(1.26人以上/床)
医師数(常勤) (62+非常勤20)以上 108
レシデント(専修医) 数名 45
研修医 数名 30
看護師 388 482
コメディカル 51 66
事務職員 23+非常勤7 25


【上記県案と併せて知事が長崎市長に申し入れた事項】
  1. 長崎市が合併特例債等を活用し、病院の建設費及び医療機器の購入費等イニシャルコストを負担し、日赤長崎原爆病院を指定管理者として病院運営を行わせ、医業収益の中から施設使用料として市に負担金を毎年12億2,000万円納めることでオープンから10年間で長崎市の借入金の償還費等財政負担はゼロになる。
  2. 新病院建設場所としては長崎駅裏が適地であり、その用地取得については県が責任を持って行うとともに、用地取得費についても応分の負担をする。
  3. 現在、長崎市が既に進めている市民病院の現地建て替え等に係る周辺の土地取得に要した費用や関連する事業についての国庫補助金の返還などについても県として応分の負担をする。
  4. 長崎市の要請があれば、一部事務組合方式により県と市が共同運営し、県が運営費の一部を負担する。

 以上について、私の委員会での質疑及び問題点の指摘等は次のとおりです。

  1.  医師について、本年8月現在、市民病院72人、成人病センター18人、原爆病院75人の計165人いるが、県案ではこれを108人の常勤医にする。そうすると計算上57人が余剰になる。看護師についても、また、コメディカルについても余剰が出る。
     そうであれば、これらの医療資源の取り扱いはどうなるのか。また、医師や看護師やコメディカルを3病院からジョイントすることで計画しているような高度医療のサービスが、医療機器の整備は別として、スキル的に賄えると考えているのか。もし、難しいのであればそのスキルを持った医師等の確保はどうするのか。

  2.  今回の県の提案において3病院統合して運営する場合は、初年度から10年間の収支計算で市は真水の財政負担がゼロになることを強調しているが、これは余りにも乱暴な言い方で誤った与件を与えることになる。
     なぜならば、収支計算書によると、医業費用において看護師482人の退職給与引当金を除く年間給与単価630万円/人としているが、現在の市民病院の看護師の給与実態は740万円/人。即ち、原爆病院の看護師の単価をベースにしているが、市とは1人当たり年間110万円の格差がある。したがって、これらは、仮に統合の際は市が努力して給与表を改革し、人件費を大幅に圧縮することを前提にしており、収支が成り立つかどうかは結局このことに関わっているわけで、つまり、市の事前の取り組みの成否が収支に大きく影響を及ぼすにもかかわらず、これを棚上げして市の真水の負担がなくなるという提示は問題点を隠した都合のいい出し方である。
     また、3病院の医師をはじめとする医療スタッフ全員を指定管理者たる日赤に果たして引き取らせることができるか、これについても結局は長崎市の取り組みが求められるところであり、ハードルが高い。

  3.  また、収支計算では、日赤が指定管理者として病院を運営し、10年間で122億円を施設使用料名目で市に負担金として支払うことで、市の真水の財政負担がゼロになるという説明であるが、計画通りだとすれば、日赤は病院経営の医業収入から支払うわけであるから、実質負担はゼロということになる。
     そうであれば第一に、市が看護師等の給与水準を日赤並みに引き下げることが出来るとすれば、別段、指定管理者を置かず直営であっても市としては一切の持ち出しはなく、したがって、公設民営にすることで経営がうまくいくという論拠は何もない。
     逆に、仮に医業費用を抑えられなかったら、赤字となって、日赤が支払う分の10年間で122億円の財源を日赤はどのように手当てするのか、そのリスクは日赤として負担するということと、財源の捻出方法については見通しがあるのか。
     併せて、市が望む場合は、県市で一部事務組合をつくって運営し、県も運営費について応分の負担をすると言っているが、仮に、その図式で行う場合も収支計算において黒字である以上、県市の新たな負担は生じないが、実際は医業費用も抑えられないとすれば、県のいう応分の負担というのは、どのようなオーダーになるのか。いずれにせよ矛盾した提案である。

  4.  県の申し入れは、(1)市民病院・成人病センター及び日赤長崎原爆病院を廃院し、一つの病院に統合すること。(2)新病院の運営は日赤を指定管理者とすること。(3)新病院の設置場所は長崎駅裏とすること。という3点セットとして提案されている。
     市の事業が既に着手されている現状にあって、3点セットでの申し入れは、残された期間が余りに短いため、取り入れるべきは取り入れ、より良い病院とするための市の検討・見直しの余地を狭めることとなる。
     特に場所の変更と日赤長崎病院の廃院、新病院の指定管理者については市民・議会の合意形成など平成25年度中の開院というタイムスケジュールに照らして現実的に極めて困難な状況にある。
     こうした市の立場を考えたときに提案の仕方として、もっといくつかのバリエーションをもって示すべきである。

  5.  県の申し入れにおいて、長崎駅裏を新病院の建設地として、用地取得については県が責任を持って行い、かつ、取得費用についても応分の負担を行うとしており、さらには、知事は定例記者会見の中で、JR貨物のトップには既に了解を取り付けていると話しているが、それでは、どのような条件で了解を取り付けているのか明示すべきである。
     また、長崎市は既に現在地を拡張することで用地買収を進めており、新たに駅裏の購入経費をさらに負担するということは考えられないことから、結局は県が全ての経費を負担せざるを得ないことになる。
     提案している計画の施設面積48,000uから考えると敷地約160,000u程度が必要と思料されるが、その場合時価が70万円から100万円であることから全体試算で34億円から48億円程度になるが、このような多額の経費を支出するという提案を知事がスタンドプレーで行うことは議会との関係で適正手続を逸脱している。

  6.  用地取得に関連して、市は既に市民病院周辺の民有地の取得に約14億4,000万円を支出しており、かつ、今後の契約予定分として約9億円を抱えている。
     また、市民病院を現在地で建て替えることを折り込んだ中心市街地活性化基本計画を基に「くらし賑わい再生事業」を実施するとして国から4億8,000万円の補助金の交付決定を受けているが、市民病院の建設地を長崎駅裏に変更した場合、この補助金の返還も必要になってくる。
     こうした数字を具体的につかまえた上で県は応分の負担をすると言っているのか。仮に承知しているとすれば、いくら負担するのか。さらに、市民病院の現在地での建て替えについて県は既に県として都市計画決定しているわけであり、移転を勧めるということは、事業者としての県と法の執行者としての県と相反することを行っているが、この矛盾をどのような理屈で整理しようとしているのか示すべきである。

  7.  仮に、長崎市に対する県の提案が受け入れられなかったとしたら、高機能病院の整備とその目的の一つである医師確保対策についての善後策をどうとるのか。

 以上の私の質疑及び主張に対して県の明確な答弁がないことから、今後議会閉会中にも委員会を開催し継続審議することになりました。
 皆様のご意見をお寄せ下さい。

長崎新聞=12月12日付  毎日新聞=12月12日付 

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