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県立病院と離島医療圏病院の再編統合計画について

 自治体運営の公立病院の赤字経営が広がる中、総務省から、"公立病院改革ガイドライン"が示され、今年度中に赤字経営については、何らかの経営改善策をとりまとめなければならないということも手伝って、県立病院と離島医療圏病院を統合して運営する企業団の設立に向けた取り組みが進んでいます。
 内容は、県立病院である島原病院および精神医療センターと離島医療圏の基幹病院である五島中央病院並びに上五島病院、対馬いづはら病院を、長崎県及び島原市、南島原市、雲仙市、五島市、対馬市、新上五島町が共同で地方公営企業法を全部適用する企業団を設立し運営しようとするものです。
 ただし、設立から当分の間(3年間を目途)は、離島医療圏病院の残りの地域病院である奈留病院並びに富江病院、奈良尾病院、有川病院、中対馬病院、上対馬病院の6病院についても、当該企業団で運営し、これらの病院については3年の間に入院機能のあり方など、病院そのものを見直し改変するということになっています。
 そして、早速、来年度当初には企業団を設立したいというスケジュールで所要の作業が進められています。

 県においては、平成18年度に"県立病院あり方検討懇話会"が設置され、19年7月に上記のような答申がなされ、これに基づいて、離島医療圏組合との調整や、病院職員が加入する県の職員組合との交渉などを行い、県議会の厚生環境委員会でも基本的な考え方が提示されてきました。また、関係市町のうち、新上五島町においては町内の離島医療圏病院の他、町立の診療所も含めて町が設置した町内病院等の今後のあり方を専門的に検討する機関から答申を得、町としての決定ではないものの県の考え方と同一歩調で取り組む姿勢が示されています。
 また、五島市及び対馬市においても、進捗の違いはあるものの企業団の設立と地域病院の抜本的な見直しについては、同じく決定ではないものの県と同様の意向であると伝えられています。

 そこで、現時点における地域病院の見直しについての県当局他の考え方は次の通りです。
1.五島市にある富江病院と奈留病院は、いずれも19床の診療所とする。
2.新上五島町にある有川病院は、入院機能をなくし外来診療だけの診療所にし、奈良尾病院については、19床の診療所にする。
3.対馬市にある中対馬病院は、対馬いづはら病院のベッド数を増床することによって、外来診療だけの診療所とし、上対馬病院は、対馬いづはら病院の分院として、現在の84床を60床にして企業団において運営する。
 以上の内この方針を持ちながらも、これらの地域病院の改変についての取扱いは調整に時間を要するとの判断からこれらの問題はひとまず置いて、とりあえず急ぎ企業団の設立という新たな運営母体の設立を目指そうという枠組みで作業が進められています。
 そして予定では9月の定例本会議で、企業団設立についての規約の承認案件が県と関係市町の議会にそれぞれ上程される予定になっています。

 企業団設立の考え方は理解できますが、問題はこうした枠組み、即ち、地域病院の取り扱いを先延ばしし、しかし一方で、内々にその処理方針を持ちつつ、これを関係住民に知らせないまま、つまり、住民との間での十分な論議をしないまま、今後の病院経営の主体となる企業団を設置し、いわば外枠を固めてしまうというやり方が適切かということです。
 このままでは、病院の利用者である住民の意向がなんら汲み取られることなく、既定路線のように地域病院がなし崩し的に整理縮小されてしまうおそれがありますし、そもそも住民の生命と健康を守るための地域医療の公的体制が、肝心の住民不在の中で変えられていくことは公的病院の使命からしても、適正手続が踏まれているとはとても言えるものではありません。
 私の提案により改革21会派では、ことの重大性に鑑み、五島と対馬でこの問題についての住民公聴会(タウンミミーティング)を6月14・15日と6月28・29日の4回に亘って実施しましたが、参加者の大多数からは、地域病院の取り扱いが先行き不透明なままでの企業団の設立はおかしいということと併せ、地域病院についての現時点での考え方としての規模・機能の縮小は、住民としてとても納得できないものであり、基本的には、現状を維持すべきであるとの意見が寄せられました。

 さもありなんであります。
 公的病院は、特に他に公立以外に病院がない地域にあっては、地域住民に必要な医療を適切な水準をもって提供することに使命と存在意義があるわけでありますから、したがって財政問題のみに偏することなく、あくまでも地域医療を守り、より効果的にサービスを提供するという基本視点からの改革でなければなりません。
 確かに、人口が減少し、病床利用率や外来患者数が減少する一方で、医者をはじめとする医療資源の安定的な確保が難しくなり、また、経営の赤字幅が膨らむ中で、時間距離がさほどない位置に同種・同規模の公的病院が立地し、これをどちらも同じように運営していくことは無理があります。特に勤務医の労働条件は過酷で、中々なり手がなく、そもそも新臨床医研修制度のお陰で長崎大学の医学部を卒業した学生が大都市の病院に流れてしまうという現状においては、これまでの体制を維持しようにも維持できないという厳しい状況にあることも一定理解することができます。
 したがって、広域的な視点から、医療資源も集約化することが、かえって、提供する医療サービスが増し、機能縮小する病院においても基幹病院の医師のローテーション等により、与えられた機能において提供する内容は幅が広がる。したがって、外来機能に特化する病院にするという見方は、一定合理性があるように見受けられます。

 しかし、翻って考えてみるに、必要な地域医療を提供するということは、患者の症状に合わせて急性期医療、慢性期医療、リハビリ医療、緩和ケア医療、在宅医療、さらには福祉と医療の連携ということが、トータルなパッケージとして地域の中において提供できる体制が備わったものでなければなりませんし、そうした全体の枠組みにおいて、それぞれの病院や診療所が機能分担しながら連携し合うものでなければなりません。
 したがって、入院病床を持つことは経営上無理があるから、外来だけにするというような安直なことではなく、現在の状況と資源において住民の利用形態を踏まえつつ、どのような再配置をすることが経営改革にもつながり、より効率的な医療サービスの提供につながるのかということを多くの選択肢の中から検証していくことが肝要であり、新たな運営体制づくりに取り組む今日、そのことが求められると考えます。
 したがって、これらの検討や、住民の一定理解が示されない状況での、枠組みづくりとしてのみの企業団の設立ということには、県当局の再考を求めたいと思います。

  平成20年7月

長崎県議会議員
比良 元


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